ガンマ線照射による水晶体タンパク質αA-とαB-クリスタリンの構造および機能変化の差違

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  • The effects of gamma irradiation on lens proteins of human alpha A- and alpha B-crystallin

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緒言:水晶体を構成するタンパク質の約90%はクリスタリンであり、脊椎動物ではα-, β-, γ-クリスタリンから成る。α-クリスタリンは分子量20 kDaのαA-クリスタリン(αA)とαB-クリスタリン(αB)のサブユニットから成る500-800 kDaの会合体で、他のクリスタリンの無秩序な凝集を阻害するシャペロン活性を有し、水晶体の透明性を維持している。αAとαBは会合体形成能、シャペロン活性を有し、物理化学的性質は類似しているので、α-クリスタリンがなぜ、αAとαBの2種類の異なったサブユニットで構成されているのかは現在不明である。そこで我々は外的ストレスへの感受性がαAとαBで異なり、水晶体機能維持のために相補的に機能しているのではないかという作業仮説を立て、酸化ストレスの一つであるγ線を個々に照射し、これら2種類のクリスタリンの構造および機能変化の相違について検討を行った。<BR> 実験:ヒトαAおよびαBは大腸菌(BL21)を用いて発現させた。精製した各クリスタリン1 mg/ml を0-2.0 kGyでガンマ線(60Co)照射した。照射前後の試料の会合体のサイズはサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて分析をし、機能解析はアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)を基質としたシャペロン活性測定により評価した。<BR> 結果:SEC分析により、ガンマ線照射に依存しての会合体のサイズはαAよりもαBの方が著しく増加していた。シャペロン活性測定において、未照射ではαBの方がADHの凝集抑制が高かった。ところがαAは2.0 kGy照射しても凝集抑制を保っていたのに対し、αBは0.5 kGyでADH凝集抑制が半分になり、1.0 kGyではシャペロン活性がほぼ失活していた。これらの実験結果より、γ線により生じるラジカル反応に対する感受性はαBの方がαAよりも高いことが初めて明らかとなった。したがって水晶体中に同機能を持つαAとαBが存在するのは、様々なストレスに対し相補的に働くためではないかと考えられた。

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