ガンマ線照射によるDNA切断の一塩基対ごとの位置特定

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  • Identification of DNA scission site by gamma ray irradiation at one base pair level

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抄録

【緒言】DNAは放射線によって損傷を受けることが知られており、損傷の種類、修復機構などが研究されている。しかし、これまでその切断位置の特定や切断位置の特異性などは詳しく研究されてこなかった。そこで本研究では、60Coガンマ線を照射してDNAを切断し、独自に開発した手法により一塩基単位でその切断位置を特定した。さらに、その切断位置と塩基の種類およびDNA二次構造との関連性を考察した。【実験】500 ng/ul濃度のpBR322プラスミドDNA(form I)水溶液を調製し、照射線量0-20 Gyの範囲で60Coからのガンマ線(0.31 MeVと1.17 MeV)を照射した。照射後のDNAの一部をアガロースゲル電気泳動にかけ、切断が起きているかどうかを確認した。切断が起きていることを確認したのち、新規に開発した手法[1]により一塩基対単位での切断位置を特定した。【結果と考察】ガンマ線照射によるDNA切断と切断位置の特定は同じ条件で二回行った。二回とも切断はほぼ同じ位置で生じていることを確認し、再現性があることを確認した。次に、実験に使用したDNA溶液を数日間室温放置して、その切断位置を特定した。その結果、ガンマ線による切断位置と室温放置による切断位置が一致していることを確認した。さらに、市販のプログラムで予測したDNAの二次構造上でその切断位置を確認したところ、80%以上の切断がループ上で起きている結果を示した。ループ上の塩基は不安定状態であると考えられる。これまで、放射線によるDNA切断には位置特異性はないと考えられてきた。しかし、これらの結果より、DNAの塩基配列には構造的に不安定箇所が存在し、ガンマ線照射によりその不安定箇所で優先的に切断が起きていると考えられる。発表では、本切断位置特定法を詳しく紹介するとともに、切断頻度についても評価できることを議論する予定である。【参考文献】[1]F. Sakamoto et al., J. Biochem. Biophys. Methods, 52, 97-109 (2002).

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