Neuro-ophthalmological manifestations at late stage following sarin exposure

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  • サリン被害後の神経眼科的後遺症

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目的:サリンは強力な抗コリンエステラーゼ作用を有する神経毒である。1994年松本市、翌年東京で起きたサリンテロの多数の被害者の中に、15年以上経過した今日でも眼や視覚関連の自覚症状を有する人が多数いる。しかし、通常の眼科検診では正常範囲と判断されがちである。 我々は、その多数例に対し、一般眼科的観点のみならず神経眼科学の観点から検診を行ったところ、主として中枢神経系異常が示唆される臨床所見が得られたので報告する。<BR> 対象:NPO法人リカバリーサポートセンターでの被害者聞き取り調査で、眼や視覚関連の愁訴を有する305例(男女比154:151、平均年齢47歳)に、2002年から8年間に当院神経眼科外来で、医療面接、視力、視診による瞳孔径(明所、暗所)、眼位および眼球運動、細隙灯顕微鏡と眼底鏡による一般眼科検査を行った。必要に応じ、視野、調節力、電気眼球運動図などの検査も追加し、解析した。<BR> 結果:眼症状として最多のものは眼疲労感であり、次いで「視力低下」「焦点が合わない」「羞明」「眼痛」と続いた。明確な他覚所見が得られた例は58例(19%)で、明所での過剰な縮瞳(径<2.5mm)、暗所散瞳不十分(<4mm)が18例、調節障害が11例あった。眼瞼痙攣は10例に、眼球運動異常は9例で確認された。<BR> 考察:瞳孔径の異常は急性期には縮瞳としてみられるが、今回みられたものはその遺残というより、明るさと瞳孔径の対応関係が崩れた可能性がある。調節障害は質的解析は不能なので、氷山の一角が検出できたのみである。眼瞼痙攣は基底核、帯状回などを含む中枢回路の異常の反映と考えられる。滑動性眼球運動は多シナプス中枢回路で構成される機能であるが、これに不調を生じたものと推定できる。<BR> 結論:サリン被害者の慢性期の神経眼科所見として、近見、瞬目、眼球運動の構成に関る中枢高次障害が遺残しているものがあると考えられる。<BR>

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205657198976
  • NII Article ID
    130007002752
  • DOI
    10.14869/toxp.38.0.195.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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