遺伝毒性発がん物質における閾値の存在
書誌事項
- タイトル別名
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- Existence of a threshold for genotoxic carcinogens
説明
遺伝毒性発がん物質には閾値がないとの仮説に基づいて発がんリスク評価がなされている。我々はこれが正しいかどうかを検証するために、ラット肝発がん中期検索法を用いて、種々の遺伝毒性発がん物質の低用量発がん性を"Weights of evidence"の観点から検討してきた。<BR> 食肉や魚の焼け焦げに含まれているヘテロサイクリックアミンの一つであるMeIQxを様々の用量で16週間経口投与した結果、肝前がん病変の指標であるglutathione S-transferase placental form (GST-P)陽性細胞巣の発生は0.001~l ppmでは増加せず、10 および100 ppmで増加を示した。また、lacI遺伝子導入トランスジェニックラット、すなわちBigBlueラットにMeIQxを上述の用量で投与したところ、10 ppm以上で変異頻度の増加を、100 ppmでGST-P陽性細胞巣の増加を認めた。これらの結果より、MeIQx の肝発がん性およびin vivo変異原性に無作用量の存在が明らかとなった。また、ヘテロサイクリックアミンであるIQおよびニトロソ化合物であるDENの肝発がん性においてもMeIQxと同様に無作用量が認められた。<BR> さらに、MelQxとDENとの低用量複合投与によるラット肝発がん性を検討した。DENの投与量を0.01 ppm(単独での無作用量)と一定にし、MeIQxの投与量を0.01から100 ppmまでかえた実験では、GST-P陽性細胞巣の発生は複合投与してもDENを併用投与しないのと同様、MeIQx 1 ppm(単独での無作用量)までは無処置群と変化なく、10 ppm以上で増加を示した。なお、各用量のMelQx投与群におけるGST-P陽性細胞巣の発生にDEN投与の有無による変動は認められなかった。また、MeIQxおよびDENの両者の投与量をかえた実験では、GST-P陽性細胞巣の発生は無作用量の両者の複合投与群では無処置群と差はなかったが、発がん用量の複合投与群では増加が認められた。このように、低用量の遺伝毒性発がん物質の複合投与においても無作用量の存在することが判明した。 以上より、遺伝毒性発がん物質には閾値、少なくとも実際的な閾値があると結論される。これらの結果が、発がんリスクアセスメントに有用な情報となり、リスクマネジメントに大いに役立つことが期待される。
収録刊行物
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- 日本トキシコロジー学会学術年会
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日本トキシコロジー学会学術年会 38 (0), 184-184, 2011
日本毒性学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205657217152
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- NII論文ID
- 130007002777
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可