フルタミド投与後のラットおよびヒト肝細胞キメラマウスにおける肝遺伝子発現変動の比較

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Hepatic gene expression in flutamide-treated rats and chimeric mice with humanized liver

抄録

【目的】肝機能不全、および重度免疫不全を有するuPA/SCIDマウスにヒト肝細胞を移植することにより、肝臓の一部がヒト肝細胞で置換されたキメラマウスが得られる。置換率が70%を超える高置換ヒト肝細胞キメラマウス(PXBマウス)ではヒト薬物代謝酵素が高レベルで発現しており、薬物の代謝、排泄パターンがヒト型を示すことが知られている。したがって、PXBマウスはヒトにおける薬物体内動態を推定するためのモデル動物としてだけでなく、ヒト型の薬物代謝に起因する毒性発現、特に肝毒性の発現を解析するために有用なモデル動物であると考えられる。我々はヒトに特異体質依存性の肝毒性を示すが、げっ歯類には顕著な肝毒性を示さないフルタミドをモデル化合物として用い、種々の生理学的パスウェイにおけるラットとPXBマウスの肝遺伝子発現変動の相関を解析した。【方法】7週齢のSDラットもしくはPXBマウスにフルタミドを300mg/kgの投与量で単回もしくは連続経口投与した後、肝臓のTotal RNAを調製しAffymetrix社のGeneChip® Rat Genome 230 2.0アレイもしくはHuman Genome U133 Plus 2.0アレイにより肝臓の遺伝子発現を測定した。【結果および考察】フルタミドはラットにおいてarylhydrocarbon receptor(AHR)やNRF2などの核内受容体により転写制御される遺伝子、特にCYP1A2やGSHなどフルタミド代謝に関与する遺伝子の発現を強く誘導したが、PXBマウスにおけるこれら遺伝子の発現誘導は顕著ではなかった。また、ラットにおけるp53の発現誘導は顕著であったが、PXBマウスでは発現抑制が見られた。逆にApoptosisに関与するカスパーゼ3やカスパーゼ6はPXBマウスで強く誘導されたが、ラットにおいては発現が抑制された。これらのフルタミド代謝に関与する遺伝子発現の種差、および肝細胞のproliferationにかかわる遺伝子発現の種差がフルタミドの肝毒性発現の種差に関与している可能性が考えられる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205657864960
  • NII論文ID
    130007003076
  • DOI
    10.14869/toxp.35.0.253.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ