特異体質性薬物毒性-動物からヒトへの外挿が困難な毒性の回避法の提案-
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- 池田 敏彦
- 横浜薬科大学
書誌事項
- タイトル別名
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- Idiosyncratic drug toxicity -Proposal of a new approach for circumventing human-specific toxicity, unprecictable from animal experiments
抄録
特異体質性の薬物毒性(Idiosyncratic Drug Toxicity: IDT)は特定の患者層のみに発現し,動物実験では再現できない。予測手段がな く臨床上の発現を回避できないと言われ,重点的な検討が必要とされる。複数の遺伝的素因が関与しているようであり,薬物受容体, 薬物代謝酵素および主要組織適合遺伝子複合体クラスI(MHCクラスI)の遺伝子変異が候補の一つと想定されている。ただし,現段階で 提唱されているIDT発現メカニズムの多くは作業仮説であり,将来の実証的研究が待たれる。<br> 薬物受容体の変異は薬物感受性を増大させる可能性があり,その例としてハロタンによる悪性高熱症と筋細胞リアノジン受容体の変異 との関連が報告されている。薬物によりリアノジン受容体が開孔し,細胞内カルシウム濃度が上昇することが原因ではないかと想定さ れている。<br> グルタチオンS転移酵素(GST)の活性欠損を与える変異は,反応性代謝物の生成を高める可能性があり,GSTT1とGSTM1の同時欠損 型変異はトログリタゾン,タクリン,クラブラン酸アモキシシリンなどの肝毒性と関連することが知られている。反応性代謝物が肝細 胞内の重要な蛋白質や核酸に共有結合し, 細胞機能障害,細胞ストレスおよび細胞死を引き起こすと考えられている。<br>MHCクラスIの変異は,カルバマゼピンによるスティーブンス-ジョンソン症候群やチクロピジンの肝障害と関連することが報告されて いる。恐らく反応性代謝物を結合した蛋白質がMHCクラスIを介した非自己排除系を起動させると推察される。これに関してはウィル ス性肝炎に類似した発現機序が想定されている。<br> IDTを回避するには,前臨床の段階では反応性代謝物の生成を防ぐ種々の方法論が考案されている。臨床の段階では,遺伝子解析によ りIDTと関連するSNPsを特定し,変異を有する患者への投与を禁忌とする方法が回避法として考えられる。
収録刊行物
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- 日本トキシコロジー学会学術年会
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日本トキシコロジー学会学術年会 37 (0), 5-5, 2010
日本毒性学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205658264320
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- NII論文ID
- 130007003352
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可