アリールハイドロカーボン受容体の生物学とトキシコロジー

DOI
  • 平林 容子
    国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター毒性部
  • 李 光勲
    国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター毒性部
  • 尹 秉一
    国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター毒性部 韓国国立江原大学校 獣医学部
  • 藤井 義明
    筑波大学 先端学際領域研センター
  • 金子 豊蔵
    国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター毒性部
  • 黒川 雄二
    佐々木研究所
  • 菅野 純
    国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター毒性部
  • 井上 達
    国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター

書誌事項

タイトル別名
  • Role of biological function of the aryl hydrocarbon receptor

抄録

アリールハイドロカーボン受容体(AhR)は、TCDD等への異物結合能を持たないとされる無脊椎動物は別としても、調べられた限りでの脊椎動物でorthologueが保存され、示唆される生物学的機能の検討は、AhR機能の毒性学的理解に重要である。これまで行った関連実験の結果は以下の通りである。 <BR>【結果】1.AhR機能の指標として、異なった系統のマウスの受容体結合能と寿命の間には明らかな相関が認められた(C3H/He:500、DBA/2J:710、C57BL/6J:786日)。2.また、無処置のホモおよびヘテロのAhR欠失マウス(AhR-/-, AhR+/-)と野生型マウス(AhR+/+)の死亡曲線を比較すると、AhR-/-群の寿命は明らかに短く(AhR-/-群:756、AhR+/-群:855、AhR+/+群:890日)、3.そのゴンペルツ表現による発症函数は、エピジェネティックな促進加齢型を示すなど、4.AhRが、がん抑制遺伝子である可能性を示唆した。5.造血幹・前駆細胞の細胞周期を調べると、AhRはこれを抑制していた。6.この結果は、AhR欠失マウスでstem cellは分化に傾き維持能が低下していたことと符合し、AhRはdormancyとgenomic stabilizationに関係があると考えられる。7.他方AhR-/-の未分化な細胞では、DCFH-DAの蛍光量で測定される酸化的ストレスが高い傾向があり、AhRの制御が酸化的ストレスの制御を介しているものと考えられる。 <BR>【考察】造血の場は、定常状態ではhypoxicである。このhypoxiaの状態ではAhRはARNTをHif1αにとられるので、定常状態で微弱な酸素などが引き起こしている野生型での調節的酸化的ストレス影響はAhR欠失マウスとの差異でも見えにくい。しかし、過酸化水素などの負荷下ではAhRの間接的抗酸化は明瞭であり、その寿命への効果が分子進化的役割を担っているものと考えられる。尚、ベンゼン誘発造血障害は酸化的ストレスにより、野生型ではベンゼンによる過剰な酸化的ストレスが充分に消去できないために、結果として白血病誘発の母地となる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205658285824
  • NII論文ID
    130007003376
  • DOI
    10.14869/toxp.35.0.74.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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