ベンゼンの造血毒性は、骨髄特異的異物代謝によって引き起こされる

DOI
  • 平林 容子
    国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部
  • 尹 秉一
    国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部 韓国国立江原大学校 動物資源学部 獣医学教室
  • 李 光勲
    国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部
  • 藤井 義明
    筑波大学先端学際領域研究センター
  • 金子 豊蔵
    国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部
  • 黒川 雄二
    佐々木研究所
  • 菅野 純
    国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部
  • 井上 達
    国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター

書誌事項

タイトル別名
  • Benzene induced hemopoietic toxicity is induced by possible stem-cell specific xenobiotic metabolism mediated by aryl hydrocarbon receptor in the bone marrow.

抄録

未分化な造血前駆細胞のもつ異物代謝性化学物質受容体arylhydrocarbon receptor (AhR)は細胞増殖の抑制シグナルを惹起する。このことは、無処置のAhR-knockout(KO)マウスで観察される白血球数の増加によって背理的に示され、同様に種々の骨髄前駆細胞CFU-S-9やCFU-S-13の数でも有意な増加が認められる。無処置の野生型(Wt)マウスにおけるこうした造血の抑制シグナルを惹起するAhRに対する生理的リガンドは明らかではないが、AhRを介した異物の侵襲下で、造血前駆細胞が細胞周期からはずれてdormant分画に入り込むとするならば、合目的的ではある。ここで生ずる疑問は、そうした造血前駆細胞にAhRが局在するものの、異物代謝の場は肝臓にゆだねられるとした場合の不合理にある。この疑問を解決するため、Wtマウスに致死線量の放射線を照射した後、AhR-KOマウスの骨髄細胞を移植することで、Wtマウスの骨髄を再建した際の造血障害の発生の有無を検討した。結果として興味深いことに、AhR-KOマウス由来骨髄細胞で再建したマウスにベンゼンを暴露しても、造血障害は発生しなかった。このことは、Wtマウスにベンゼン暴露をした後の骨髄に、CYP2E1の高発現が観察されたことによっても裏付けられ、ベンゼンの造血毒性が骨髄特異的な異物代謝産物によって惹起される可能性を示している。今後AhR-KOマウスをWt骨髄細胞で再建する裏実験の結果が得られれば、以上の推測は明確化する。肝の異物代謝の役割については、いっそう疑問が残るのでこれについても明らかにしたい。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205659506560
  • NII論文ID
    130007004235
  • DOI
    10.14869/toxp.33.0.233.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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