ウシグソヒトヨタケの光形態形成に必須の<I>dst2</I>遺伝子の分子遺伝学的解析

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タイトル別名
  • Molecular genetic analysis of the <I>dst2</I> gene essential for photomorphogenesis of <I>Coprinopsis cinerea</I>

抄録

真正担子菌ウシグソヒトヨタケでは,子実体原基が子実体成熟過程に移行するためには青色光が必要であり,子実体原基を連続暗黒下で培養すると原基下部が徒長した“dark stipe”が形成される.これまでに我々は,適切な光条件下で培養しても“dark stipe”を形成する光形態形成突然変異体を複数株得て,それらの遺伝分析から光形態形成にかかわる二つの遺伝子dst1dst2を同定した.このうち,dst1遺伝子はLOVドメインをもつタンパク質をコードしており,アカパンカビの青色光受容体wc-1のホモログであることが判明している.しかし,dst2遺伝子の働きについては不明であった。そこで本研究では,dst2突然変異体について,表現型分析及び分子遺伝学的解析を行った.  先ず,dst2突然変異体の表現型について改めて調査した.その結果,dst2突然変異体は,有性生殖での子実体の発生過程だけでなく,無性生殖でのオイディア形成の過程においても光感受性を失っていることが明らかになった.次に遺伝分析を行った結果,dst2は第5染色体上に座位することが分かった.そこで,第5染色体のコスミドライブラリーから,dst2変異を相補するクローンを検索し,クローン5F8を同定した.さらに,5F8が運ぶ約30 kbのゲノム断片の中でdst2変異を相補する活性を持つ領域は約4.5 kb内にあることを突き止めた.この4.5 kb のゲノム内に推定される遺伝子について,RACE実験,cDNA及びゲノムDNAのシークエンスを行い,dst2のORFは9個のイントロンで分断されており,723個のアミノ酸からなるDst2タンパク質をコードしていることを確定した.またドメイン検索により,Dst2はFAD-binding-4ドメインをもつことを明らかにした.  Dst2は,青色光を吸収する発色団であるFADを結合するドメインをもつことと,dst2変異が光不感受の表現型を示すことを併せて考えると,青色光受容体である可能性が高く,また,FAD結合ドメインの構造が今まで見つかっているどの青色光受容体のものとも異なることから,新規の青色光受容体であることが示唆される.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205660394624
  • NII論文ID
    130007004602
  • DOI
    10.11556/msj7abst.52.0.73.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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