日本の海岸砂地と中国の沙漠地帯より採集したフミヅキタケ属菌について
書誌事項
- タイトル別名
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- <I>Agrocybe</I> species found in Japanese coastal dune and Chinese desert area
説明
フミヅキタケ属(Agrocybe)はハラタケ型の子実体を形成し,他属とはかさが肉質で,胞子紋が暗褐色~汚褐色である点で異なり,世界の林地,草地,耕地,砂地などの環境に広く分布する.本属については,かさの被膜とつばの有無,かさ表皮の菌糸構造,縁シスチジアと側シスチジアの有無と形態,及び担子胞子とその発芽孔の大きさが種を識別する重要な分類形質とされ(Nauta, 2005),世界で約100種が報告されている.今回,日本各地の海岸砂地と中国の沙漠地帯より22点の本属菌の標本を採集できたので,これらの形態的特徴を明らかにし,分類学的検討をおこなった.その結果,これらの標本は形態的に以下の4種に類別され,東アジアの砂丘地域には多様な本属菌が分布することが示唆された.なお,これらのうち3種は本属既知種と形態的特徴が一致せず,未記載種と考えられる.<BR> (1)Agrocybe pediades (Fr.) Fayod: かさ表皮が子実層状被でなく,湿時粘性を有し,その最上層がゼラチン質の菌糸から,下層は不定形のエレメントから構成される点,縁シスチジアが紡錘形で先端に頭状~頭状の頚部を持つ点が特徴である.本種には,本郷(1957)によりハタケキノコの和名が与えられている.北海道,茨城,千葉,静岡,徳島の海岸砂地及び中国寧夏回族自治区の沙漠地帯産.<BR> (2)Agrocybe sp. 1: かさ表皮の最上層がゼラチン質で複雑に絡み合った菌糸から,下層は不定形なエレメントからそれぞれ構成され,子実層状被とならない点でA. pediadesと類似するが,縁シスチジアが棍棒形で頂部に指状~嘴状に伸びた突起を持つ点で明らかに区別される.北海道の海岸砂地産.<BR> (3)Agrocybe sp. 2: かさ表皮はゼラチン質の菌糸を欠き,典型的な子実層状被をなす点が特徴である.縁シスチジアは紡錘形で先端に頭状~頭状の頚部を持つ.北海道,福島,茨城の海岸砂地産.<BR> (4)Agrocybe sp. 3: かさ表皮はゼラチン質の菌糸を欠き,典型的な子実層状被をなす点,縁シスチジアが紡錘形で先端に頭状~頭状の頚部を持つ点で,Agrocybe sp. 2に類似するが,柄に明瞭なつばを持ち,柄の肉がすみやかに青変する点で明らかに区別される.北海道の海岸砂地産.
収録刊行物
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- 日本菌学会大会講演要旨集
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日本菌学会大会講演要旨集 53 (0), 52-52, 2009
日本菌学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205660738048
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- NII論文ID
- 130007004730
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可