日本新産の昆虫寄生性ケカビ目菌 <I>Sporodiniella umbellata</I> は雌雄異株性だった
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- 出川 洋介
- 神奈川県立生命の星・地球博物館
書誌事項
- タイトル別名
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- Heterothallism in insecticolous mucoralean fungus <I>Sporodiniella umbellata</I> new to Japan
説明
Sporodiniella属はBoedijn (1958)により設立されたケカビ目の単型属で、S.umbellata 一種を含む。インドネシアより発見されて後、熱帯(エクアドル、台湾)から報告されてきたが、昨年までに協力者により国内の4地点(茨城県、神奈川県、京都府、東京都)で夏季(8から10月)に野外採集された試料を検討したところ原記載によく一致し、本種と同定された。本種の成熟接合胞子は、Evans & Samson (1977)、Chien & Hwang (1997)により、古い虫体基質上から報告されている。前者は「“顕微鏡観察に基づいて”本種は雌雄同株性である」と述べており、以後、この見解が踏襲されてきたが、具体的根拠の明示が無く、両報告とも培養下での接合胞子誘導には成功していなかった。2005年の横浜市産試料中、2体のカメムシ虫体表面に接合胞子が検出されたが雌雄性判定は不可能だった。そこで、分離菌株を検討した結果、培養下で雌雄異株性の接合胞子形成誘導に成功した。 MEYE培地上に前培養した和合性菌株対の若い栄養菌糸体片を、約1cm角に切り出し、湿室容器の蓋内面に1cm間隔で対峙させ25°Cで培養したところ、単独時には胞子嚢柄になる直伸菌糸が胞子嚢を形成せず接合枝を分化し、気中でH字型の同型配偶子嚢接合を示して黒色粗壁の接合胞子を形成した。本種に最も近縁なフタマタケカビ属は雌雄同株性であるが、やはりその接合胞子形成は気中性である。本種の接合胞子は基質表在性と考えられてきたが、これらは古い試料に基づく誤解釈だったと考えられる。今回得られた菌株では、いかなる培養条件下でも単独の接合胞子形成は認められず、本種は雌雄異株性だと考えられるが、最終的な判断には、雌雄同株性と解釈された海外産菌株との交配実験が必要である。
収録刊行物
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- 日本菌学会大会講演要旨集
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日本菌学会大会講演要旨集 50 (0), 54-54, 2006
日本菌学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205662007424
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- NII論文ID
- 130007004989
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可