海産全実性卵菌類の系統と進化
書誌事項
- タイトル別名
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- The phylogeny and evolution of marine holocarpic oomycetes
説明
卵菌類が属するストラメノパイル生物群は真核生物の8大系統群の一角を占める非常に大きな系統群であり、遊泳細胞の鞭毛表面に三部構造の管状小毛(マスティゴネマ)を持つことなどで特徴付けられる。この生物群は他に褐藻や珪藻類などの黄色藻類、バクテリアを捕食するビコソエカ類、分解者であるサカゲツボカビ類やラビリンチュラ類などを含み、非常に多様な栄養摂取様式をとることが知られている。卵菌類は海洋、淡水域、陸上といった様々な環境に生育し、単細胞性の寄生種から発達した菌糸体を形成する腐生種にいたるまで形態学・生態学的に多様である。しかしながら、その知見のほとんどが培養の比較的容易な腐生性ミズカビ類や植物病理学上重要なツユカビ類に限られていたことから,卵菌類の起源、進化過程はほとんど解明されていなかった。本研究では,純粋培養が困難なために詳細な研究がほとんどなされてこなかった海産の全実性卵菌類を材料とし,これらの分子系統解析及び微細構造比較解析を行うことで,卵菌類全体の系統関係,形態進化の過程を明らかにすることを試みた。SSU rRNA,cox2両遺伝子を用いた分子系統解析では海産全実性卵菌は二つのクレードに分けられ,それらは卵菌類内で最も初期に分岐した。微細構造学的形質はミズカビ類とツユカビ類のグループ内では比較的よく保存されているのに対し,海産全実性種は非常に多様性に富んでいた。また,海産全実性種における遊走子形成時の遊走子嚢内の液胞形成様式や鞭毛形成のタイミングはツユカビ類よりもむしろミズカビ類と共通していた。更に,ミズカビ類全般に共通して見られる二形性遊走子や遊走子鞭毛基部付近のK-小体様構造がいくつかの海産全実性種にも見られた。このことは,ミズカビ類で見られる特徴が卵菌類の原始的なものであり,ツユカビ類が卵菌類内で特殊化したグループであることを示唆している。
収録刊行物
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- 日本菌学会大会講演要旨集
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日本菌学会大会講演要旨集 52 (0), 10-10, 2008
日本菌学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205662691200
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- NII論文ID
- 130007005179
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可