線条体出血ラットにおける運動スキル訓練が運動機能回復と大脳皮質のΔfosB陽性細胞の発現に与える影響

DOI
  • 玉越 敬悟
    名古屋大学大学院医学系研究科リハビリテーション療法学専攻
  • 石田 章真
    名古屋大学大学院医学系研究科リハビリテーション療法学専攻
  • 濱川 みちる
    名古屋大学大学院医学系研究科リハビリテーション療法学専攻
  • 中島 宏樹
    名古屋大学大学院医学系研究科リハビリテーション療法学専攻
  • 嶋田 悠
    名古屋大学大学院医学系研究科リハビリテーション療法学専攻
  • 石田 和人
    名古屋大学大学院医学系研究科リハビリテーション療法学専攻

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抄録

【目的】先行研究で、脳損傷ラットに対する運動スキル訓練は単純運動より中枢神経系のシナプス数増加促進を導き、運動機能の回復を促進させることが報告されている。しかし、その具体的なメカニズムは不明な点が多い。本研究は脳出血モデルラットにおける運動スキル訓練が運動機能回復と長期的な神経活動のマーカーであるΔfosBタンパク質の発現に与える影響について検討した。<BR> 【方法】実験動物にはWistar系雄性ラット(n=14)を用いた。脳出血後、無作為に非運動群(n=8)と運動スキル訓練群(n=6)の2群に分けた。脳出血モデルは、左線条体中央部にコラゲナーゼ(200 U/ml,1.2 μl)を注入して作成した。運動スキル訓練群には、アクロバットトレーニング(格子台、縄梯子、綱渡り、平行棒、障壁の各コース長1 m移動)を術後4~28日まで、1日4回実施した。運動機能評価には、麻痺の重症度を評価するMotor Deficit Score (MDS)、前肢及び後肢のステップ機能を評価するHorizon ladder test、後肢の協調運動を評価するBeam walking testを実施した。組織学的評価はHE染色により傷害体積、大脳皮質の厚さを解析した。また、免疫組織染色により、大脳皮質の感覚運動関連領域のΔfosB陽性細胞数を解析した。<BR> 【結果】運動機能評価で、MDS、Horizon ladder test、Beam Walking testにより、運動スキル訓練群は非運動群より運動機能を早期に有意な回復を示した。組織学的評価で、傷害体積、大脳皮質の厚さは、両群に有意差は認めなかった。大脳皮質におけるΔfosB陽性細胞数は、傷害側と非傷害側の体性感覚野では運動スキル訓練群は非運動群より有意に高値を示した。<BR> 【考察】脳出血モデルラットにおける運動スキル訓練は運動機能を早期に回復させることが示された。体性感覚野におけるΔfosBタンパクの発現増加から、運動スキル訓練は体性感覚野の神経細胞に長期的な神経活動を起こし、運動機能の回復促進に寄与するきっかけとなるものと考えられた。(本研究は科研費(22500456)の助成を受けたものである)

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