尿失禁に対する骨盤底筋訓練の効果
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説明
【はじめに】 尿失禁は直接生命に関わることはないものの、生活の質(Quality Of Life:QOL)に多大な影響を与えることが報告されている。しかし、尿失禁による様々な問題があるにも関わらず、実際に医療者に相談する高齢者は18%に過ぎないという報告がある。<br> 今回、尿失禁を呈する人々に有益な情報を提供することを目的に骨盤底筋訓練の効果とQOLの変化を調査した。<br>【方法】 対象は折り込み広告で募集した。骨盤底筋訓練はホームエクササイズを中心に10週間実施した。初期評価は、基本情報調査(年齢、身長、体重、出産経験、尿失禁を自覚してからの期間、尿失禁の治療経験)、QOL問診票(International Consultation on Incontinence Questionnaire-Short Form:ICIQ-SF)とキング健康調査票(King’s Health Questionnaire:KHQ)を調査した。ICIQ-SFとKHQは、訓練開始5週目(中間評価)と10週後(最終評価)に実施した。前半5週間のホームエクササイズは坐位で行い、できるだけ強く6秒間収縮12秒間弛緩を10回、できるだけ速く強い収縮を10回、できるだけ強く6秒間収縮と12秒間弛緩を10回の計30回の収縮弛緩を1セットとして、1日に3セット(1日計90回の収縮弛緩)を実施した。後半5週間のホームエクササイズは、前半のエクササイズメニューを臥位、坐位、立位のそれぞれの姿勢で1セットずつ行い、骨盤底筋を収縮させてからしゃがみ込む動作を10回(1日計100回の収縮弛緩)実施した。さらに、骨盤底筋収縮のための運動指導を週1回60分間実施した。<br> 本調査は同意のための説明書を提示し、同意書に署名を受けた者のみを対象として行った。なお、研究に先立ち星城大学倫理委員会の承認を得た。<br>【結果】 尿失禁を呈する女性10名(年齢56±7歳、腹圧性尿失禁6名、混合性尿失禁4名)から応募があった。全ての対象者は移動能力に制限が無かった。最終評価で尿失禁が無くなったと回答した者は10名中4名(40%)と高い割合を示した。尿失禁の頻度が減少した者を含めると100%に改善を認めた。また、KHQが示す全般的健康感、生活への影響、仕事・家事の制限、身体活動の制限、社会的活動の制限、個人的な人間関係、心の問題、睡眠・活力、重症度評価のすべての項目は、初期評価に比べ最終評価で改善を認めた。<br>【考察】 骨盤底筋訓練の効果を示した論文は散見されるものの、訓練の回数、期間、頻度、方法が異なっている。そのため尿失禁の改善率が17%~84%と論文によって大きな差がある。今回の我々の取り組みは先行研究を上回る結果であった。また、10週間の骨盤底筋訓練の取り組みは、QOLの改善に効果を示した。<br>【まとめ】 今回は特別な機器を使用せず、ホームプログラムを中心に骨盤底筋訓練を実施した。この結果は、尿失禁に対する運動療法を実施するための有益な情報であると考える。
収録刊行物
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- 東海北陸理学療法学術大会誌
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東海北陸理学療法学術大会誌 28 (0), 138-, 2012
東海北陸理学療法学術大会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205666469248
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- NII論文ID
- 130005455930
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可