若年男性における末梢への寒冷刺激後の血管内皮機能の喫煙による影響

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抄録

【目的】 血管内皮機能障害は動脈硬化の初期に生じるといわれ、動脈硬化の進展が冠動脈疾患や脳血管障害を引き起こす。脳血管障害患者に対して疼痛軽減や痙縮軽減のために温熱療法や寒冷療法が処方されることが多くみられる。しかしながら、このような物理的刺激が血管内皮機能に影響を及ぼすのかについてはまだ明らかにされていない。そこで本研究では、若年者を対象に寒冷刺激が血管を拡張する血管内皮機能に影響を及ぼすのかについて実験研究によって明らかにすることを目的とした。<br>【方法】 研究の対象者は、健常男性30名(年齢20-21歳)であった。対象者の内訳は喫煙者15名、非喫煙者15名であった。対象者には研究内容、参加の自由、個人情報の保護などについて書面と口頭で説明し、同意書への署名を得たうえで開始した。血管内皮機能は、endo-PAT 2000(Itamar Medical社)を使用して、指-振動計測による反応性充血指数(RHI)により評価した。endo-PAT2000は、内皮由来の血管拡張機能を測定するものである。寒冷刺激は、駆血側前腕に対し、10分間の持続アイシングを行った。RHIは、安静時と寒冷刺激後に測定した。また、体重体組成計HBF-362(オムロンヘルスケア社)を使用して体重、体脂肪率、骨格筋率を測定した。身体活動量を姿勢と強度から一日のPAを推定する肢位強度法(PIPA)を使用し、問診によって一日の行動記録を調査して算出した。対象者の中で、脈波の異常な減弱による測定不能者を除外した。その結果、有効なデータは非喫煙者群で13データ、喫煙者群で14データであった。統計解析は、各群の安静時と寒冷刺激後のRHIの比較は対応のあるt検定を使用し、各群間のアウトカムの比較には対応のないt検定を使用した。有意水準は5%とした。<br>【結果】 対象者特性は、体重62.9±8.8㎏、BMI20.9±2.6、体脂肪率13.6±5.8%、骨格筋率36.7±6.9%、身体活動量は2066.1±849.3kcal、体重1㎏当たりの身体活動量は33.2±7.8であった。RHIは非喫煙者群で安静時2.14±0.58、寒冷刺激後1.93±0.54、喫煙者群で安静時1.70±0.32、寒冷刺激後1.95±0.66であった。非喫煙者群と喫煙者群の比較では、安静時のRHIにおいて有意差が認められた(p<0.01)。安静時と寒冷刺激後の比較では、有意差は認めらなかった。<br>【考察】 RHIは安静時に喫煙者と非喫煙者の間で有意差が認められた。若年者であっても喫煙による化学的な血管内皮のダメージは血管内皮由来の血管拡張機能に影響を与えることが示唆された。また、安静時と寒冷刺激後のRHIは有意な差を認めなかったが、非喫煙者では安静時より寒冷刺激後にRHIは低下し、喫煙者ではRHIは増加するという傾向が見られた。喫煙の有無や寒冷刺激の条件によって血管内皮機能に差が出る可能性が考えられる。<br>【まとめ】 若年男性喫煙者と非喫煙者の寒冷療法後の血管内皮機能を評価した。その結果、安静時の血管内皮機能は喫煙者が有意に低下していた。また、寒冷療法後の血管内皮機能は非喫煙者で低下し。喫煙者で増加する傾向がみられた。なお、本研究は、日本学術振興会の科学研究費助成事業(22700553)の助成を受けたものである。

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