若年男性における血管内皮機能に対する喫煙の影響

DOI
  • 藤川 諒也
    金沢脳神経外科病院 リハビリテーションセンター
  • 野口 雅弘
    金城大学 医療健康学部理学療法学科

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抄録

【目的】 喫煙は動脈硬化を亢進する危険因子として知られている。動脈硬化のイニシャルステップとして血管内皮機能障害による血管拡張・弛緩反応の低下が注目されている。喫煙による血管内皮機能障害に関する報告は多くあるが、若年喫煙者を対象とした報告は少ない。本研究は、若年男性における血管内皮機能に対する影響を明らかにすることを目的とした。<br>【方法】 対象は健常な男子大学生27名(年齢20-21歳、喫煙者12名、非喫煙者15名)とした。全対象者には研究の趣旨、内容および調査結果の取り扱い等に関して書面並びに口頭で十分に説明し、同意を得た後に実施した。喫煙量を割り出す目安のBrinkmann指数は30.7±24.7(喫煙本数13.2±1.4本/日、喫煙期間2.2±1.4年)であった。血管内皮機能はEndo-PAT2000(Itamar Medical社)にて測定した。この機器は前腕の駆血後再灌流時における指先脈波の変動を専用指先プローブで検出しコンピュータ解析で反応性充血指数(Reactive Hyperemia Index:RHI)として定量化するシステムである。体重、BMI、体脂肪率、骨格筋率の測定には、体重体組成計HBF-362(オムロンヘルスケア株式会社)を用いた。身体活動量(PA)は、姿勢と強度から一日のPAを推定する肢位強度法(PIPA)を使用し、問診によって一日の行動記録を調査して算出した。統計学的検討は、各群のBMI、体脂肪率、骨格筋率、PIPA、RHI、体重1㎏当たりのPIPA(PIPA/体重)の2群間の差を対応のないt検定を用い、RHIと評価項目との関連性についてPearsonの相関係数を用いて評価した。なお、有意水準は5%とした。<br>【結果】 喫煙群RHI1.7±0.4、BMI21.9±3.0、体脂肪率13.8±6.2%、骨格筋率36.5±2.2%、PIPA2186.4±640.5kcal、PIPA/体重32.7±8.8kcal/㎏。非喫煙群RHI2.1±0.4、BMI20.1±2.7、体脂肪率14.1±4.4%、骨格筋率36.6±2.0%、PIPA1854.1±285.4kcal、PIPA/体重31.6±3.7kcal/㎏であった。RHIは喫煙群が非喫煙群に比べ、有意に低値を示した(p<0.05)。RHIと評価項目における相関関係は認められなかった。<br>【考察】 RHIは血管拡張能を反映し、正常値が1.67以上、異常値が1.67以下とされている。今回の調査では、両群ともに1.67以上だったが喫煙群のRHIが有意に低下しており、これは喫煙群が非喫煙群に比べ血管内皮機能の低下を示唆すると考えられる。中高年を対象とした先行研究より、喫煙がヒト血管内皮に与える影響としてNO合成酵素活性の減弱があると言われている。今回の結果より若年喫煙者においても同様にNO合成酵素活性の減弱が起きているのではないかと考える。<br>【まとめ】 本研究の成果は、若年男性喫煙者においても血管内皮機能は低下していることが示唆されたことである。この成果より、若年かつ短期間の喫煙においても血管内皮細胞は障害されていることが示唆される。

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