回復期病棟における歩行補助具と運動・認知機能との関係
書誌事項
- タイトル別名
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- ~BBSに注目して~
説明
【目的】Berg balance scale(以下BBS)は、総合的なバランス検査として広く普及しており、転倒リスクを予測する指標として有用である。先行研究では自立に要するBBS得点や杖処方に関するカットオフ値の基準値が報告されている。また、多くの文献でBBSとTimed up&Go test (以下TUG)、膝伸展筋力、mini mental state examination(以下MMSE)、Modified Falls Efficocy Scale (以下MFES)などとの関連性が述べられており、運動機能と認知機能が転倒リスクに関連していることが分かっている。しかし、これらの研究は、デイケアや施設入所者を対象としたものが多く回復期病棟入院患者を対象とした研究は少ない。また、現在入院患者に使用されている歩行補助具の選定において、杖の基準値のみでは対応できず、BBSの各歩行補助具選定となる基準がない。<BR>前回我々はBBSを用いて病棟内歩行自立群において歩行補助具別のBBS合計点に差があるか調査した。その結果杖群がピックアップ群より有意にBBS合計点が高かった。<BR>そこで今回、回復期病棟患者を対象として独歩群、杖群、ピックアップ群の3群間での比較検討を行い、歩行補助具別による各評価項目の検討、BBSと各評価項目の関連性、そして歩行補助具選定時の評価項目を明らかにすることを目的とした。<BR> 【方法】平成23年1月8日から3月6日までの期間で独歩または歩行補助具を用いて、監視レベルから自立レベルにて歩行可能な者とした。対象は回復期病棟に入院している36名の内本研究の主旨を説明し同意を得られた患者18名(男性7名、女性11名、76.9±7.6歳)とした。歩行補助具別に独歩群(整形6名、脳血管1名)、杖群(整形6名、脳血管2名)、ピックアップ群(整形2名、脳血管1名)の3群に分類した。なおBBS検査の施行に困難をきたすような著しい高次脳機能障害、骨関節疾患を有するものは除外した。<BR>運動機能の評価項目としてBBS、TUG、膝伸展筋力、認知機能の評価項目としてTrail making test PartsA(以下TMTA)、MMSE、転倒恐怖感の評価項目としてMFESを測定した。<BR>BBS、TUG、膝伸展筋力、TMTA、MMSE、MFESの3群間比較とBBSと各群間内評価項目の相関関係の統計処理を行った。統計処理はSPSS19.0 J for WindowsとR 2.13.0 for Windowsを用いた。3群間比較には反復測定による分散分析を用い、多重比較検定はSteel-Dwass検定を用いた。相関検定はShapiro-wilk検定を行い、Pearsonの相関係数を用いた。危険率は5%未満とした。<BR> 【結果】3群間の年齢において有意差は見られなかった。BBS得点は独歩群が最も高く、他の2群と有意差が認められたが、杖群とピックアップ群との間には有意差は認められなかった。膝伸展筋力は独歩群>杖群>ピックアップ群の順に強く、相互に有意差が認められた。TUGの所要時間は独歩群>杖群>ピックアップ群の順に速く、独歩群とピックアップ群の間には有意差があった。MMSEの点数は杖群>ピックアップ群の順に高く有意差があった。<BR>BBSと各評価項目との相関係数を見ると、独歩群ではMMSE、膝伸展筋力、TUGにかなりの相関があった(r=0.565、-0.536、0.581)。杖群ではMMSE、膝伸展筋力にかなりの相関があった(r=-0.55、-0.481)。ピックアップ群ではMMSE、膝伸展筋力にかなり高い相関があった(r=0.893、0.996)。<BR> 【考察】先行研究によると30秒立ち上がりテストや片脚立位保持時間、歩行速度、Functional Reach Testと大腿四頭筋の相関関係が高い事が報告されており、丸山らはBBS合計得点において膝伸展筋力を測定者群で良好・不良の2群に分けた時、良好群でBBS点数が高い分布を示すことを報告している。中村らによると高齢者の重心動揺増大時に大腿四頭筋は主要姿勢筋として筋活動量の大きくなることを報告している。また、平田らや松谷らによると認知機能や高次脳機能の障害によりBBS合計点が高いものでも病棟内において自立と判断できず、監視となるケースがあることを報告している。<BR>結果から回復期病棟に入院患者に対して歩行補助具を選定する判断材料としてBBS得点と膝伸展筋力は有効であることが示唆された。また、BBS得点とMMSEの各群間内に関連性を見出すことが出来たが、歩行補助具選定において有効な指標となるかどうか今後検討の必要性がある。<BR> 【まとめ】歩行補助具を選定する判断材料としてBBS得点と膝伸展筋力は歩行補助具を選定する判断材料として有効であった。BBS得点とMMSEには3群間内すべてで関連性が見出せたが歩行補助具の選定基準として有用かどうかは判断できなかった。<BR>
収録刊行物
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- 東海北陸理学療法学術大会誌
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東海北陸理学療法学術大会誌 27 (0), 182-182, 2011
東海北陸理学療法学術大会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205666637952
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- NII論文ID
- 130007005745
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可