通所リハビリテーション施設における糖尿病足病変管理への試み
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抄録
【目的】 糖尿病足病変や末梢動脈疾患は下肢切断の主要な原因である.これらの症例では,全身状態の悪化や多様な合併症がみられる.外傷などの切断症例と比較し,著しくADLやQOLが低下してしまう.近年、これらの糖尿病足病変や末梢動脈疾患が加速度的に増加している.在宅や通所施設などの維持期リハビリテーション場面においても,このようなリスクを持つ患者に出会う可能性が高くなっている.糖尿病足病変は神経障害による知覚消失のため損傷に気づきにくいという特徴があるため,患者から適切な情報を得ることが難しい.足病変リスクの放置は潰瘍形成を介して,切断を引き起こす.これは,患者の運動機能的な障害を引き起こすだけでなく生活機能やQOLを含めた健康状態そのものを脅かしてしまう.医療施設においては,医師,看護師が足病変予防のための介入を行い,理学療法士も連携して管理にあたる場合もある.しかし,専門の医師や看護師の少ない在宅,通所施設では,足病変リスクが高い症例が放置されてしまう可能性がある.そこで,我々は,通所リハビリテーション(以下通所リハ)場面で,理学療法士が足病変管理に関わることで,どのような貢献ができるか本症例を通じて検討することを目的として研究を行った. 【対象】 症例:70歳代,女性,診断名は脳梗塞左片麻痺.既往症は糖尿病,閉塞性動脈硬化症,白内障、高血圧.現病歴は平成17年7月9日に脳梗塞発症し入院治療.平成18年7月1日に右第1,2基節骨骨髄炎を発症.歩行は,オルトップを装着し,T字杖にて屋外歩行,坂道歩行が自立レベルである. 【足病変の評価】 糖尿病神経障害はアキレス腱反射消失.末梢動脈疾患の評価,後脛骨動脈,足背動脈は触知可能.皮膚状態は,両下腿皮膚温低下,右足背部チアノーゼが見られる.足部の状態は,両Claw toe,右母趾外反変形,関節可動域制限あり. 【経過と介入】 平成20年4月1日.通所リハ実施.平成22年4月8日.著者に担当変更.4月30日.理学療法実施時に本症例から右足趾に違和感があると訴えがあった.足部の観察で右第3趾潰瘍を発見した. ABIは0.7であり,末梢動脈疾患が疑われた.血管外科への受診促すが,独居のため受診を拒否した. 5月.本症例は当施設にて週3回入浴している.通所リハスタッフに患者の身体状況を説明し,入浴後の足趾のチェックを依頼した.5月24日.小趾内側の虚血による皮膚の変化を発見し皮膚科受診へ繋がった.皮膚科では、定期検診と共に右母趾胼胝の角質除去を受けることとなった.8月.当施設には,義士装具士がいないためプラスタゾートで作成されたインソールによる介入を実施した.使用後,足趾の潰瘍,出血などは出現せず,胼胝も改善傾向にあった.また,足底圧上昇の原因となる右母趾関節可動域練習も週3回実施した.11月.右第4趾胼胝形成.本症例の足病変リスクとインソールの定期的交換が必要である旨を家族へ説明し,新しいインソールと交換をした.12月2日.右母趾伸展30°へ改善がみられた.平成23年5月現在,足病変の悪化なく継続して通所にて管理している.血管外科への受診に関しては,リスクを説明し継続的に受診を促していく予定である. 【考察】 本症例は,社交的であり,近所付き合いも多い.通所リハへ週4回参加しており,活動性も高い.通所リハへの参加は,本症例にとっての生きがいである他者とのコミュニケーションの場として重要であると考えられた.もし,切断などが生じれば,歩行能力の低下や廃用などが生じる.通所リハへの参加,独居も困難となり,本症例の健康を保つことができない.足病変のリスク管理を行うことにより,独居生活を行うためのADL能力を維持することにつながる.そのためには,当通所リハで足病変のリスクの管理を施行し,迅速な対応ができるように理学療法を提供しなくてならない.しかし,足病変への介入においては当施設だけの対応では難しく,各機関における連携や地域の環境作りが重要であると考えられた. 【まとめ】 通所施設という場でも,理学療法士が,通常の理学療法に加えて糖尿病足病変管理に関わることで,患者の生活機能やQOLの維持改善にさらなる貢献ができる可能性があると感じた.また,その介入が,単に足病変の管理という点だけではなく,患者の健康状態の維持に重要な役割を担っている.つまり,疾病の予防だけでなく,患者の生活能力の維持という点で生活そのものへの介入と並行して足病変予防に貢献できる点が,在宅部門での足病変管理の特徴であると考えられる.
収録刊行物
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- 東海北陸理学療法学術大会誌
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東海北陸理学療法学術大会誌 27 (0), 191-191, 2011
東海北陸理学療法学術大会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205666772352
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- NII論文ID
- 130007005871
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可