肩関節周囲炎の取り組み
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- 長谷川 賢治
- ひらまつ整形外科リハビリテーション科
書誌事項
- タイトル別名
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- 第2報 整髪動作について
説明
【目的】肩関節周囲炎の活動制限の一つに、手の挙上ができないことで生じる整髪動作障害が挙げられる。整髪動作は櫛またはブラシで髪を整える動作であり、肩を水平まで挙上した状態で保持をし、髪の流れに沿って手を後頭部まで動かさなければならない。しかし関節可動域(ROM)制限や筋力低下、疼痛等があれば動作は困難となる。整髪動作は、頸部、肩、肘、手指の総合的の協同運動により行われる。今回、肩関節の働きに着眼し、整髪動作に必要となる関節運動及び筋力の面から、動作の検証を行ったので若干の考察を加え報告する。<BR> 【方法】整髪動作は櫛で鏡を見ながら行う一連の動作とした。肩関節運動は、水平内転約45度で、20度前後の挙上運動と、外旋80度以上で内外旋運動が協調して行われる。そしてこの関節運動は動作が終了するまで、上肢挙上位を保持していく能力が必要となる。そこで肩関節の評価として1、動作のROM。2、筋出力では筋力と耐久力。3、疼痛等の侵害感覚を挙げた。1、運動範囲を示すROMは、肩関節の屈曲と外転、回旋。回旋は3姿勢で測り、1st positionは0度肢位、2nd positionは外転90度、3rd positionは屈曲90度での内外旋を測定した。2、筋出力は、徒手筋力テスト(MMT)とJOAの肩関節疾患成績判定基準で示す耐久力の項目、1kgの鉄アーレを肩関節90度挙上位での保持時間、肘伸展及び回内位で判定した。3、動作時の制限要因としての疼痛で鋭痛や鈍痛、だるく病めるような違和感を観察した。以上の3項目について評価を行い、さらに相互の関連性について検証した。<BR> 【結果】改善例は、関節運動では水平内転が容易で、1stまたは2nd position で外旋90度以上の動きが可能であり、さらにMMT4以上及び耐久力が10秒以上違和感なく保持できた症例であった。しかし困難例では関節運動や筋出力が不十分な場合。また耐久力は十分であったが関節運動で鋭痛があった例(タイプ1)、関節運動は十分であったが耐久力で鈍痛やだるく病める違和感があった例(タイプ2)は、動作を終了することが困難であった。<BR> 【考察】整髪動作は、鏡の前に座位または立位をとり、髪をとく動作で、関節可動域だけでなく、上肢を水平外転位で動作終了まで保持し続ける筋出力が必要となる。関節運動は、鏡を見て動作を行うため洗髪や結髪動作と違い、頸部の代償が小さく、体幹や手指の代償を利用しても外旋運動の広範囲な可動域が必要となる。水平内転45度での外旋運動改善が動作獲得のポイントとなるが、1stまたは2nd position のいずれかが外旋90度以上の場合に、動作可能な外旋運動が得られた。しかし動作の角度が満されていても運動痛、特に鋭痛がある場合は動作が困難となった(タイプ1)。筋出力では、筋力がMMT4以上で、動作を実施することは可能だが、動作の途中で鈍痛やだるく病める違和感がある場合は動作継続が困難となった(タイプ2)。また改善例の域まで達しているが、動きの円滑性に欠け、巧緻性が不十分な例が見られた。上肢運動は頭の形や髪の流れや長さによって、櫛の向きや力の入れる方向を多様に変化させるため、繊細な動きが求められる。動作には手指の運動、前腕の回内外、肘の屈曲伸展の微妙なコントロールが必要である。その動きを安定させるためには支点となる肩関節の固定性が不可欠となり、肩の安定性を担う筋力が動作実施には必要条件となる。つまり筋出力には、動作を実行する筋力、上肢を動作終了まで保持する耐久力、動作中に肩を安定させる筋力の3要素の役割があると考えられた。<BR> 【まとめ】肩関節周囲炎でよく見られる整髪動作制限について、動作の関節運動と筋出力、疼痛の関係から検証を行った。動作において、関節運動は外旋角度の獲得がポイントとなった。筋出力は、筋力と耐久力、安定性を確保する筋力の3種類の働きがあることが分かった。
収録刊行物
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- 東海北陸理学療法学術大会誌
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東海北陸理学療法学術大会誌 27 (0), 93-93, 2011
東海北陸理学療法学術大会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205666942720
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- NII論文ID
- 130007006030
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可