回内足と回外足のレントゲン側面像、背底像における足部縦アーチと横アーチの関係
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【はじめに】 臨床上、足部疾患を観察していると踵部が回内している回内足と回外している回外足に遭遇する。その際にフットプリントを確認すると後足部からの重心軌跡が、回内足では内側よりに、回外足では外側よりに通過しているように考えられる。また、レントゲンの背底像を確認すると、第1趾、第2趾、第4趾、第5趾の各中足骨間の開張の仕方が回内足、回外足によって異なる傾向を持っている印象を受ける。通常、前足部の横アーチは第2中足骨を頂点としたアーチを形成するが、回内足と回外足のどちらのタイプでも前足部の横アーチの低下を認めることは多い。しかし、回内足と回外足の足部縦アーチと前足部横アーチの低下の関係性について研究している報告は我々の渉猟し得た限りでは見当たらない。 今回、回内足と回外足のレントゲン側面像における荷重時の内外側縦アーチと、レントゲン背底像における横アーチの関係について検討したので考察を加え報告する。 【対象】 本研究は平成20年9月から平成22年6月に有痛性足部疾患にて当院を受診した44例56足を対象とした。性別は男性20例、女性24例、罹患側は右足26足、左足30足、後足部タイプは回内足28足、回外足28足であった。 【方法】 自然歩行時のフットプリントによる林の分類のB、Eと動作分析で踵接地(以下、HC)の後足部が回内しているものを回内足群(以下、P群)、林の分類のCと動作分析でHCの後足部が回外しているものを回外足群(以下、S群)として分類した。 レントゲン側面像を用い荷重時の横倉法による足穹窿係数r値、c値、n値、l値、f値、b値、m値の測定を行った。また、レントゲン背底像にてM1M2角、M1M5角、M4M5角の測定を行った。そして、P群、S群それぞれの足穹窿係数の各値とM1M2角、M1M5角、M4M5角が相関関係にあるかPearsonの相関係数を求め検討した。また、M1M2角、M1M5角、M4M5角におけるP群とS群の差についても検討した。 【結果及び考察】 P群ではr値とM1M5角の間(r=0.266)とl値とM1M5角の間(r=0.206)に弱い相関を認め、S群ではc値とM1M5角の間(r=0.215)に弱い相関を認めた。その他の各値は相関を認めなかった。また、M1M2角、M1M5角、M4M5角については、M4M5角のみS群がP群よりも有意に大きかった(P<0.01)。 臨床的な印象としては、回内足では足部の内側よりに、回外足は足部の外側よりに重心軌跡が通過しているため、前足部は回内足でM1M2、回外足でM4M5を中心に開張することが想像されたが、今回の結果からレントゲン上では縦アーチの各値と横アーチの開張度を示す各値は強い相関関係にはないと考えられた。その理由としては、レントゲンの撮影方法において背底像は、前足部に荷重がかかるとされる立脚後期のような足関節背屈位ではなく足関節軽度底屈位で荷重をかけ撮影されていることから、フットプリントのように歩行時の足部の状態を描写しているものではない。そのため、足部の縦アーチとの相関が得られなかったと考えられる。 しかし、P群とS群の前足部が同様の形態をとるということは、P群は後足部が回内している状態から前足部はカウンターとしての床反力が加わり回外することによって前足部が開張しているように推察されるが、S群は後足部が回外している状態から前足部が過度に回内する状態となり、前足部が開張しているように推察される。そのため、この2つを前足部のみから同じ状態だとは判断できない。横アーチの開張度を示すM1M2角、M1M5角、M4M5角の中で、M4M5角のみS群がP群よりも有意に大きかったのは、S群が後足部で回外している状態から、前足部にかけて過回内する際に横アーチの第5中足骨部、第4中足骨部を底側方向へ押し潰すような過度なストレスがかかり、その間が開張するためだと考えられる。また、有意差はないが平均値で比較すると、M1M2角はP群がS群よりも大きかった。 レントゲン画像は患者の状態を把握する大切な情報源であるが、今回のP群とS群のように2つの状態を比べる際には、一部の局所をみて同じものだと判断せず、同じ形態にみえてもそこに至る経緯を考え、総合的に判断することが大切である。足部の場合、縦アーチが低下していても横アーチが開張するとは限らず、その逆で横アーチが開張していても縦アーチが低下するとは限らない。そのため、レントゲン所見のみならず、実際に目で観察する動作分析やフットプリントなど、総合的な評価によって治療方法を考慮する必要があると考えられた。
Journal
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- 東海北陸理学療法学術大会誌
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東海北陸理学療法学術大会誌 27 (0), 99-99, 2011
東海北陸理学療法学術大会
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- CRID
- 1390001205666952704
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- NII Article ID
- 130007006035
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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