動揺視患者の読みのパフォーマンス

説明

【目的】異常眼球運動などに伴う動揺視は、程度が大きくなると視力低下をきたす。しかし、視力低下をきたさない程度であっても、読字が困難であると訴える患者はまれではない。MNRead-Jを用いて測定される「読書視力」は、一般に近方視力とほぼ等しい。また、「臨界文字サイズ」は、それよりもやや大きな文字サイズになる。動揺視があると近方視力がよくても、読む文字サイズが小さいときに読書速度が低下しているということが予測される。このため、「臨界文字サイズ」が通常に比べて大きくなるのではないかと考え、これを検証するための実験を行った。<BR>【方法】対象は、動揺視を有する脳幹出血・梗塞患者4名と両側迷路障害患者2名と正常コントロール4名であった。実験は、ENGによる正中固視における異常眼球運動の測定、近方視力検査およびMNRead-Jによる「読書視力」と「臨界文字サイズ」の測定を行なった。正常群では、4種類のローパスフィルターを用いて、読みにくい状態での「読書視力」と「臨界文字サイズ」の測定を合わせて行なった。各被験者の「読書視力」と「臨界文字サイズ」の差に注目し、統計学的に二群の差を検定した。<BR>【成績】正常コントロールにおける「読書視力」と「臨界文字サイズ」の差は、平均0.32 (標準偏差0.08)logMARで、読みにくさによらず、ほぼ一定であった。これに対し、動揺視患者における「読書視力」と「臨界文字サイズ」の差は、0.40 (標準偏差0.14) logMARであった。これら二群の間での平均値の差の検定をMann-Whitney U検定で行なったところ、有意差は認めなかった。<BR>【結論】少数例のため、統計学的には有意差は認められなかったものの、相対的な「臨界文字サイズ」が、動揺視患者において大きくなっている傾向が示された。今後、症例を重ね、再検討を行う予定である。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205667076096
  • NII論文ID
    130007006113
  • DOI
    10.14908/jslrr5.6.0.46.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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