視覚障害者の障害受容過程に見られる意識の変化について

説明

目的<BR> 著者は前回の学会で、視覚障害者が受障後、自分の障害を受け入れていくためには、その障害や疾病、享受できる福祉制度の知識を十分に獲得することが重要であることを報告した。障害や本人の疾病に対し、初期に適切な説明と今後のあり方が情報提供されると、障害や疾病そのものに対する不安が軽減すると考えられる。そのためには、受障後どのような心理的な変化があるのか、どのように障害を捉えていくのかなど、その障害受容過程を明らかにしておくことが重要である。本研究では、視覚障害者の障害受容過程にみられる、障害、自己、社会に対する意識の変化を明らかにする。<BR> 対象および方法<BR> 対象は、中途視覚障害者5名(糖尿病性網膜症:男性1人,女性1人,緑内障:男性1人,網膜色素変性症:男性1人,強度近視:女性1人,平均年齢66歳)であった。いずれも、A眼科クリニック(T市)を受診し、視覚障害を原因とした身体障害者手帳を所持する者および、手帳取得に該当する者であった。方法は、障害受容の構成要素を知るために非構造化面接調査法で実施した。調査内容は、小嶋(2004)の1.現在の障害の状態、生活状況、2.受障前の自己に対する意識、3.障害に対する意識の変化、4.社会に対する意識の変化、5.自己に対する意識の変化、6.今後の人生に対しての展望、の6点について聴収した。なお対象者には、眼科クリニックに来院した際に、本調査の説明を十分に行い、実施について同意を得た。分析は、逐語記録から、障害受障後の心理状態をテキストマイニング手法(藤井ら,2005)で分析した。<BR> 結果および考察<BR> 3.障害に対する意識の変化について報告する。受障直後及び初期の段階で出現頻度の高かったものは、「不安」、「見えない」、「怖い」、「分からない」、「呪う」、「不治」という言葉であった。その後時間経過に伴い、「慣れる」、「落ち着く」、「見える」、「仕事」、「理解」という言葉が多くなる傾向が認められた。これらのことから、障害に対し、始めは、見えないことから、不安や分からないことが多く、自分の境遇を呪ったりしたが、仕事が出来ることや周りの人の理解と慣れによって、気持ちが落ち着いてくることが推測される。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205667115008
  • NII論文ID
    130007006185
  • DOI
    10.14908/jslrr5.7.0.122.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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