有痛性分裂膝蓋骨における臨床的特徴と運動療法成績について
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説明
【目的】 有痛性分裂膝蓋骨は、成長期におけるスポーツ障害であり、治療の主体は保存療法であるとされる一方で、保存療法成績についてのまとまった報告は少ない。今回、有痛性分裂膝蓋骨と診断された症例において、臨床的特徴および運動療法の治療成績について検討したので報告する.<BR> 【対象】 平成15年4月から平成18年4月までに当院を受診し、スポーツ動作時に膝前面部痛を訴え、有痛性分裂膝蓋骨と診断された症例6例、平均年齢13.8歳を対象とした.競技種目は野球3例、その他3例であった.<BR> 【方法】 検討項目は1.徒手による外側広筋の前後方向の伸張程度 2.大腿筋膜張筋(以下TFL)短縮テス 3.外側膝蓋支帯の伸張性 4.圧痛の局在部位 5.Soupeの分類 6.走行時malalignmentの有無 7.インソールの有無 8.スポーツ復帰率および復帰後のレベル 9.治療期間について検討した.<BR> 有痛性分裂膝蓋骨に対する運動療法は、VL及びTFL、外側膝蓋支帯の柔軟性の改善を基本とし、柔軟性の獲得にもかかわらず疼痛が残存しmalalignmentを認めた症例に対してはインソールの適応とした.<BR> 【結果】 項目1~3:VL及びTFL、外側膝蓋支帯の伸張性は全例著明に低下していた.項目4:全例分裂部に一致して著明な圧痛を有した.項目5:Soupeの分類は、全例IIIで膝蓋骨上外側部に分裂骨片を認めた。項目6:走行時のmalalignmentは4例に認め、その内訳は大腿の過内旋が3例、lateral thrustが1例であった.項目7:外側軟部組織の柔軟性獲得に伴い疼痛が消失したのはmalalignmentのない2例を含む4例であった.疼痛が残存した2例にはmalalignment是正を目的としたインソールを作成し改善した.項目8:スポーツ復帰率は100%で、競技レベルの低下した例はなかった.項目9:完全スポーツ復帰までの治療期間は平均5.5週であり、ストレッチ単独で改善した4例では平均4.3週、インソール併用した2例では平均8.0週であった.<BR> 【考察】 有痛性分裂膝蓋骨は、大腿四頭筋を中心とする筋の伸張性低下に加え、スポーツ活動に伴う膝関節伸展機構の過剰な牽引ストレスが未熟な膝蓋骨の骨軟骨移行部に離開ストレスとして作用した結果、分裂部に疼痛が生じるとされる.分裂骨片に停止するVL及びTFLを介した外側膝蓋支帯の柔軟性の低下に、下腿の過内旋を伴うlateral thrustを呈することで外上方へのtraction forceが生じる.また大腿の過内旋を伴うknee in typeでは、拘縮によるtraction force に加え、Q-angleの増大に伴う膝蓋骨の外方不安定性の存在が、大腿骨顆部とのimpaction forceを生じ、疼痛が発現すると考えられた. 運動療法では、分裂骨片に生じるtraction forceを軽減させる事を目的に、VL、TFL、外側膝蓋支帯の柔軟性の獲得を第一選択とし、その後柔軟性の改善のみでは疼痛が残存する症例においては、malalignmentの修正を目的とするインソールの併用が有効と考えられた.
収録刊行物
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- 東海北陸理学療法学術大会誌
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東海北陸理学療法学術大会誌 23 (0), O056-O056, 2007
東海北陸理学療法学術大会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205668161536
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- NII論文ID
- 130007006759
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可