リトルリーガーにおける肩甲骨のScapular Winging

  • 里中 綾子
    愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所機能発達学部
  • 鈴木 伸治
    愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所機能発達学部

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【目的】リトルリーガーが肩や肘の疼痛を訴え、整形外科を受診することは、他の少年スポーツに比べ多いと報告されている。「リトルリーグ肩」、「インピンジメント症候群」、「野球肘」などの診断で、スポーツリハビリテーションを受けることも多い。これらのスポーツ障害の原因として、発育期でのオーバーユーズや投球フォームの問題などがあげられ、その対策として、肩甲帯周囲筋のストレッチや筋力強化が必要とされてきた。今回、我々はリトルリーガーの直接検診の機会を得た。理学所見から、かなりの頻度でscapular wingingなどの肩甲骨の位置異常がみられた。これらの肩甲骨の位置異常は野球による肩関節および肘関節の障害における病態生理を考える上で重要と考えられるものの、従来あまり注目されてこなかったので報告する。 【方法】愛知県内のリトルリーグチームに属するリトルリーガー14名を対象とし直接検診を行った。年齢は平均10.9±0.83歳であった。主訴、病歴を問診後、上肢自然下垂位および肩関節最大屈曲位でそれぞれ肩甲骨の位置を観察した。また、C7、Th2およびTh7棘突起をマーキングし、姿勢後面および両側面から写真撮影をおこなった。さらに自然下垂位で、C7棘突起の高さから肩甲棘内側端まで、脊椎棘突起から肩甲棘内側端まで、脊椎棘突起から肩甲骨下角までの距離を観察した。これらから肩甲骨Movement Impairment Syndromes(以下MIS、Sahrman SAによる)に分類した。 【結果】疼痛の既往は11名にみられた。検診時7名が疼痛のため通院中であった。検診時に疼痛があったものは3名であった。疼痛部位は9名が肘関節、1名が肩関節前方、1名が頚部痛であった。MIS分類は13名がScapular Winging Syndrome(うち9名が重複してHumeral Anterior Glide Syndrome)であった。また、投球側の肩甲骨の位置異常が明らかであった。1名を除き、全例に腰椎前わんが顕著であった。 【考察】本研究に参加したリトルリーガーは高率に疼痛の既往がみられた。ほとんどのリトルリーガーでScapular Winging Syndromeがみられたが、これは前鋸筋が未発達であることによる肩甲帯周辺の筋のインバランスと著しい腰椎前わんによって生じていると考える。すなわち、発達段階における肩甲帯筋による肩甲骨の固定状態はきわめて脆弱なものであり、過度な投球は肩甲骨や肩関節に負担をかける可能性が強く示唆される。また、脆弱な肩甲帯筋による弱い肩甲骨の固定が、肘関節への過大な負荷を続発する可能性が考えられる。

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