認知課題により歩容改善を認めた慢性期脳卒中患者の一症例

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【はじめに】脳卒中片麻痺患者では,共同運動パターンなどの影響により,様々な歩容異常が出現することが知られている.今回はぶん回しを呈する慢性期脳卒中患者に対し運動イメージを用いた認知課題を実施し,良好な結果を得られたので治療経過に考察を交え報告する.<BR> 【症例】40代男性,左MCA領域の梗塞による右片麻痺.発症18ヶ月後より週2回の外来理学療法にて認知課題を実施.実施前評価は片麻痺機能テスト下肢8(Stage4-2),Modified Ashworth Scale2,深部・表在感覚軽度鈍麻,歩行時は右足尖離地期のwhip,遊脚期の体幹の代償を伴うぶん回しを認めた.<BR> 【介入方法】認知課題は端座位で閉眼にて実施.膝関節90度屈曲位とし,A4用紙に5cm間隔で区切った線分を5つ描き,症例の膝関節直下に線分の中央が来るよう設置した.非麻痺側膝関節を他動的に屈曲,伸展方向へ動かし,足部がどの線上へ移動したか知覚し,回答後開眼し確認させた.麻痺側でも同様に実施し,非麻痺側との比較・照合を繰り返した.正答率の向上に伴い線分の間隔を狭くし,課題難易度を上げていった.<BR> 【結果】介入早期より異常筋緊張の減弱を認め,介入6ヶ月経過後の片麻痺機能テストは下肢Grade9(Stage5-1)へと運動麻痺が改善した.歩行時のぶん回しの消失,足尖離地期のwhipの軽減を認めた.<BR> 【考察】内藤によると,運動イメージは実際の運動に先行し,脳内で生じるシミュレーションの可能性が高いと報告している.本症例は異常筋緊張により,運動中に関節への注意喚起が困難であり,運動のイメージが困難な状態であったと推察した.認知課題に回答する為には適切な関節情報を知覚・統合することにより運動イメージを構築し,さらに非麻痺側の運動イメージと比較する過程が必要になると考えられる.本症例は認知課題に取り組む過程で異常筋緊張の制御を学習し,精度の高い運動イメージが想起可能となり,歩容の改善に至ったと考える.<BR>

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