ADL改善がみられた重症の慢性心不全4例の経験

DOI
  • 鳥居 亮
    医療法人清水会 相生山病院 リハビリテーション科
  • 村瀬 政信
    医療法人清水会 相生山病院 リハビリテーション科
  • 三次 園子
    医療法人清水会 相生山病院 リハビリテーション科
  • 飯田 泰久
    医療法人清水会 相生山病院 リハビリテーション科
  • 佐藤 貴久
    医療法人清水会 相生山病院 循環器科

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抄録

【はじめに】<BR>慢性心不全(以下CHF)に対する運動療法を行なう場合は,リスク管理が重要である.運動療法により四肢筋群など末梢器官の改善が得られ,患者のADLを改善するといわれている.今回は重症のCHFに対して運動療法を行い,心不全症状の増悪を認めることなくADLを改善できた4例を報告する.<BR>【症例提示】<BR>症例1は85歳の女性で,原因疾患が陳旧性前壁中隔心筋梗塞であった.リハ開始時のNYHAは3,移乗動作は全介助であり,BNPは81.9pg/mlであった.安静時の収縮期血圧は80mmHg前後を呈し,運動療法は収縮期血圧が80mmHg以上ある場合に移乗動作練習を中心に実施した.退院時の移乗動作は最小介助となりリハ開始後約3ヶ月で自宅退院された.<BR>症例2は81歳の女性で,原因疾患が虚血性心筋症であった.リハ開始時のNYHAは3,ポータブルトイレ使用は自立していたが病棟内歩行は不可能であり,BNPは279.4pg/mlであった.開始時の心拍数は安定していたが経過と共に徐脈がみられたため,それに注意しながら歩行練習を中心に実施した.退院時のBNPは378.7pg/mlとなったが,歩行器での病棟内歩行は自立となりリハ開始後約6ヶ月半で施設入所された.<BR>症例3は94歳の女性で,原因疾患が大動脈弁狭窄症であった.リハ開始時のNYHAは3,ポータブルトイレでのトイレ動作は可能であったが疲労感強く,移動は車椅子にて全介助であり,BNPは1582.2pg/mlであった.運動に伴い血圧が低下するため,収縮期血圧が10mmHg以上低下した場合に運動療法を中止した.歩行練習を中心に実施した.退院時のBNPは1091.7pg/mlであったが,T字杖歩行が見守りにて可能となりリハ開始後約1ヶ月半で自宅退院された.<BR>症例4は97歳の女性で,原因疾患が大動脈弁狭窄症であった.リハ開始時のNYHAは3,起き上がり動作には中等度の介助が必要で,BNPは1402.4pg/mlであった.安静時より100回/分前後の頻脈がみられ,100回/分以上ある場合は運動療法を中止した.運動療法は軽度筋力増強運動や立ち上がり練習を中心に実施した.退院時のBNPは651.9pg/mlであったが,起き上がり動作は自立しポータブルトイレでのトイレ動作が見守りにて可能となりリハ開始後約2ヶ月で自宅退院された.<BR>【考察】<BR>CHFに対する運動療法の効果は近年多数報告されている.重症のCHFに対して行なう場合は,心不全症状の増悪を招く恐れがあり厳重な注意が必要である.今回の4例はいずれも重症のCHFであったが,経過中に心不全症状の増悪を認めることなくADLを改善できた.これは厳重なリスク管理を行なったことによるものと考えられた.

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