COPD急性増悪に対し患者教育に重点をおいた一症例
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説明
【はじめに】慢性閉塞性肺疾患(以下、COPD)は増加の一途を辿り、GOLDガイドラインによるとCOPDは2020年には世界の死因別死亡率の第3位になることが推定されている。このような状況では、COPDに対しては、原疾患の治療だけでなく、呼吸不全悪化予防への対応と急性増悪への対応が重要となってくると考えられる。COPDを有する患者に対し我々理学療法士は呼吸リハビリテーション(以下、呼吸リハ)という一治療手技を通じて患者に対し包括的かつ個別的に対応し、ADLやQOLの向上を図ることができる。そこで今回、当院においてCOPD急性増悪により、入院リハを実施し、退院後も外来リハで、定期的に評価・患者指導を行っている症例を経験し、継続的呼吸リハにおける患者教育の重要性において若干の知見を得たので報告する。<BR>【症例紹介】症例は74歳、男性。妻と二人暮らし。60歳でCOPD(肺気腫)と診断され、以後近医にて加療。ADL自立、独歩可能。平成19年8月25日から呼吸困難が出現し喀痰増加も伴い、近医を受診後、当院へ紹介、8月29日COPD急性増悪の診断にて入院加療となった。入院時所見は呼吸困難を主訴としBGAはpH:7.409、PaO2:57.3torr、PaCO2:48.2torr、A-aDO2:35.8torr、HCO3-:29.8mmol/l、BE:4.2、努力性呼吸を呈していた。理学療法初期評価(平成19年9月5日):BIPAP装着中。身長168cm、体重55kg、BMI19.5、MRC息切れスケールGrade4、FVC:1.72L・FEV1:0.51L・FEV1-G:29.7%、握力左右とも25kg。HADスケール A:7/21点・D:7/21点。起居動作・セルフケア時のSpO2低下(90~86%)が著明。NRADL19/100点。<BR>【経過】入院後第6病日、呼吸法指導・排痰練習・四肢筋力強化訓練を開始。第7病日からBIPAP離脱練習。第8病日から昼間はO21L(NC)とし、歩行練習追加。第10病日、24時間パルスオキシメトリーを施行。第15病日、HOT導入を行い自宅退院。以後、外来リハを経て、90日経過にて終了としたが、終了時に自宅での非監視型運動療法および急性増悪時の行動指針を作成・指導し、外来リハ終了以降も定期的にMRE(三重呼吸リハビリテーション評価マニュアル)にて評価を施行、患者教育を継続した。<BR>【結果】リハビリ開始時と外来リハ終了時では6MWT歩行距離が0mから234mに、MRC息切れスケールGrade4からGrade3、NRADLは19点から73点にそれぞれ改善。HADスケールはA:7点 D:7から外来リハ終了後にはA:3点 D:3点と改善した。また、リハ終了後も増悪を思わせる所見は認めなかった。<BR>【考察】本症例に対し、我々は運動療法とともに患者教育を強化した。その結果、呼吸困難の改善もあり、運動耐容能・ADL・不安や抑うつといった精神機能の改善も図れ、リハ終了後6ヶ月を経過した段階で急性増悪を思わせる所見もなく、経過は良好と判断された。GOLDガイドラインによると、「増悪はCOPD患者のQOLや生命予後に影響する」と明記され、今後はCOPD患者に対し、運動療法とともに増悪を自己管理するための患者教育という要素が包括的呼吸リハを施行する我々にとっての課題とも考えられた。
収録刊行物
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- 東海北陸理学療法学術大会誌
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東海北陸理学療法学術大会誌 24 (0), P077-P077, 2008
東海北陸理学療法学術大会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205668669440
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- NII論文ID
- 130007007100
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可