端座位での側方体重移動時における移動側中殿筋・大腿筋膜張筋・大殿筋上部線維の筋電図積分値について

DOI
  • 池田 幸司
    医療法人和松会 六地蔵総合病院 リハビリテーション科
  • 津江 正樹
    医療法人和松会 六地蔵総合病院 リハビリテーション科
  • 早田 荘
    医療法人和松会 六地蔵総合病院 リハビリテーション科
  • 藤本 将志
    医療法人和松会 六地蔵総合病院 リハビリテーション科
  • 赤松 圭介
    医療法人和松会 六地蔵総合病院 リハビリテーション科
  • 大沼 俊博
    医療法人和松会 六地蔵総合病院 リハビリテーション科
  • 渡邊 裕文
    医療法人和松会 六地蔵総合病院 リハビリテーション科
  • 鈴木 俊明
    関西医療大学保健医療学部 臨床理学療法学教室

抄録

【目的】  臨床において、腹筋群や殿筋群の筋緊張低下により、端座位にて骨盤後傾を伴う体幹回旋や屈曲位などの非対称性を認める症例の理学療法を経験する。この様な症例に対し、我々は端座位での側方への体重移動に伴う体幹の立ち直り練習により、非移動側腹筋群の求心的な活動や移動側腹筋群の遠心的な活動を促している。この時体重移動側の大腿を固定し、大腿骨に対する骨盤の移動側方向への側方傾斜を伴う体幹の立ち直り練習を実施する事で、上記した腹筋群の活動性の向上を図っている。そしてこの時の移動側殿部においては支持面に対しての適応、及び殿筋群の活性化を考慮しているが、その指標となる股関節周囲筋の筋電図学的報告は少ない。そこで今回、端座位での側方体重移動時における移動側殿部への荷重量の変化が、移動側中殿筋・大腿筋膜張筋・大殿筋上部線維の筋電図積分値に及ぼす影響について検討したところ、若干の知見を得たので報告する。 【方法】 対象は健常男性8名(平均年齢29.3±6.6歳)とした。まず被験者に両上肢を胸の前で交差させ、両肩峰を結んだ線が水平位となる端座位を保持させた。そして両股関節屈曲90度・内外転0度位、両膝関節屈曲90度位と規定し、両下腿が床面と垂直位となるよう足底を接地させた。この時両殿部下に2台の体重計を配置し、殿裂を2台の体重計の中心上に位置させ、各体重計の数値を合計した値を総殿部荷重量とした。そしてこれを開始肢位とし、一側の中殿筋(以下GME)・大腿筋膜張筋(以下TFL)・大殿筋上部線維(以下GMU)の筋電図を筋電計ニューロパック(日本光電)にて5秒間、3回測定し、3回の平均値をもって個人のデータとした。また電極位置について、GMEは腸骨稜と大転子を結ぶ線の近位1/3、TFLは上前腸骨棘と大転子前縁を結ぶ線の中点、GMUは上後腸骨棘の2横指下と大転子外側端を結ぶ線上の筋腹上とし、各筋線維に沿って電極間距離2_cm_にて配置した。次に電極を配置した方へ側方体重移動を行い、荷重量を総殿部荷重量の55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%とランダムに変化させ、各課題において筋電図を同様に測定した。この時両肩峰を結ぶ線と移動側大腿・下腿は開始肢位を保持し、両足底は接地したまま側方体重移動を行うよう指示した。さらに骨盤は開始肢位より回旋及び前後傾を起こさない事とし、側方体重移動に伴い自律的に生じる非移動側の骨盤の挙上と、非移動側の股関節伸展・外旋・外転及び下腿の外側傾斜は許可した。そして開始肢位における各筋の筋電図積分値を1とした筋電図積分値相対値を求め、端座位での一側殿部への側方体重移動が移動側GME・TFL・GMUの筋電図積分値に及ぼす影響について検討した。尚、統計処理には一元配置の分散分析とTukeyの多重比較検定を用いた。 【説明と同意】 本実験ではヘルシンキ宣言の助言・基本原則及び追加原則を鑑み、予め説明した本実験の概要と侵襲、公表の有無と形式、個人情報の取り扱いについて同意を得た被験者を対象に実施した。 【結果】 GME及びTFLの筋電図積分値相対値は荷重量の増大に伴い増加傾向を認め、GMEは荷重量85%において荷重量55%と比較して有意な増加を認めた。またTFLは荷重量80%・85%において荷重量55%・60%・65%と比較して有意な増加を認めた。一方GMUの筋電図積分値相対値は荷重量の増大に伴い若干の増加傾向を認めた。 【考察】 GME及びTFLの筋電図積分値相対値は荷重量の増大に伴い有意な増加を認めた。本課題においては端座位にて移動側への荷重量の増大に伴い、固定位である大腿部に対し骨盤は自律的に側方傾斜が生じる(骨盤に対して大腿骨は内旋位)。この時、移動側のGME・TFLは股関節内旋・外転作用にて骨盤の移動側方向への側方傾斜に関与したと考える。一方GMUの筋電図積分値相対値は荷重量の増大に伴い若干の増加傾向を認めた。本課題において移動側GMUは股関節外転作用により骨盤の移動側方向への側方傾斜に関与すると考えられる。しかしGMUは股関節外旋作用を有する事から、今回の課題において股関節外旋作用にて関与すると、移動側大腿骨を骨盤に対して内旋位に保持する事が困難になる為、積極的な活動として関与を認めなかったと考える。 【理学療法学研究としての意義】  本研究結果より、端座位における側方への体重移動練習(移動側大腿固定位)時には各筋における以下の作用を考慮する必要がある。1)移動側GME・TFLについては股関節内旋・外転作用にて骨盤の移動側方向への側方傾斜に関与する。2)移動側GMUは股関節外転作用として骨盤の移動側方向への側方傾斜に関与する。今後今回の結果を指標に臨床経験を重ね、更なる示唆に努めていく。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205674595968
  • NII論文ID
    130007007423
  • DOI
    10.14902/kinkipt.2011.0.15.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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