スポーツ現場での理学療法士による個別指導がコンディショニングに対する選手の意識変化におよぼす影響

  • 高路 陽人
    医療法人仁寿会石川病院リハビリテーション室
  • 前川 慎太郎
    公立学校共済組合近畿中央病院リハビリテーション室 兵庫県サッカー協会医科学委員会
  • 伊藤 浩充
    甲南女子大学看護リハビリテーション学部 兵庫県サッカー協会医科学委員会
  • 生田 進一(MD)
    生田整形外科クリニック 兵庫県サッカー協会医科学委員会

説明

【目的】  兵庫県理学療法士会のスポーツ活動支援部は、兵庫県下にある各種競技団体からの要請を受けて主に競技会でのメディカルサポートに参画している。そのうち、兵庫県サッカー協会からの要請を受けて、毎年、各年齢層の代表チームに対するメディカルチェックやコンディショニングの指導を実施し、練習および試合への帯同もしてきている。  今回は、兵庫県サッカー協会から15歳以下中学生(U-15)選抜チームに対する上述の要請を受けたので、スポーツ活動支援部が行なったメディカルサポートの成果を報告する。  選手に対し日常のコンディショニングとしてトレーニングやストレッチング等を個別に指導したことが、選手自身の自己管理に対する意識と実施能力の向上につながったかどうかを検討する。 【方法】  対象は、兵庫県U-15選抜サッカーチームの19名である。  まず、平成22年5月15日の兵庫県トレーニングセンター開校式の際にメディカルチェックおよびフィジカルチェックと、スポーツ障害調査を実施した。これらの結果を用紙にまとめて即時に各選手に配布した後、選手全体に基本的なストレッチングの指導を行なった。  次に、第一次調査として、平成22年8月23日から26日の4日間の遠征に帯同し、「現在、練習以外で行っているストレッチングとトレーニング」に関するアンケート調査を実施した。その調査結果と兵庫県トレーニングセンター開校式の際に実施したメディカルチェックの結果に基づき、各選手に対して個別にストレッチングやトレーニング等の指導を実施した。  第二次調査として、遠征6ヵ月後の第一次調査時に行った個別指導によるストレッチングやトレーニングの実施時間などの変化について、アンケート調査をおこなった。 【説明と同意】 本調査は、兵庫県サッカー協会医科学委員会の承認のもと、選手本人への説明と同意を得た上で実施した。 【結果】 第一次調査におけるアンケートでは学校やクラブでの練習以外の時間帯で選手個々がストレッチングを行っている者は19名中11名(57.8%)、トレーニングを行なっている者は1名(5.3%)であった。   第二次調査で第一次調査の時と比較して、ストレッチングに対する意識が向上した者は16名(84.2%)、ストレッチングを行っている者は18名(94.7%)、ストレッチングの平均増加時間は16分であった。また、トレーニングに対して意識が向上した者は18名(94.7%)、トレーニングを行なっている者は17名(89.4%)、トレーニングの平均増加時間は41分であった。 【考察】  我々がスポーツ現場に関わり始めたころは、特に中学生のチームにおいて練習時間等の制約があるため決められた練習時間内でウォーミングアップとクールダウンを実施できていないのが現状であった。そのため、適切なストレッチングの方法や個別に必要なトレーニングの方法を知らないでスポーツ活動をしていた。入江らの報告によると、下校時刻が決められている中学校では特有の時間的制約が影響し、ストレッチング等の実施時間は非常に短いことを指摘している。今回の第一次調査におけるアンケートにおいても、各々の学校等チームで練習時間内にストレッチングやトレーニングの時間がとれておらず、特にクーリングダウンの時間が不十分であった。しかも、指導者からは練習後各自でストレッチング等を行うように指導されているのみであり、選手は方法がわからなかったり、効果の実感を得られなかったりするため継続的に実施できていない状況であった。このことは、当初の兵庫県トレーニングセンター開校式の際に我々が選手を集団でストレッチングの指導をした成果も十分ではないと考えられた。  中学生に対して理学療法士等が関わる機会はまだまだ少ないが、理学療法士が関わることにより選手の意識の変化やストレッチングの習得率が向上するともいわれている。ストレッチングやトレーニングを各自で実施するためには、各自の意識が大きく関与すると考えられる。第一次調査時に、選手に対して個別に理学療法士が関わり実技指導をすることによって、選手が個々に必要なストレッチングとトレーニングを体感でき、その体験が刺激となり第一次調査後の練習や試合以外の時間も積極的に選手は実施するようになったと考えられた。 【理学療法研究としての意義】 スポーツ現場で理学療法士が選手に関わり、指導をすることによってコンディショニングに対する意識の向上と実施率の向上がみられたことは、理学療法士が医療現場だけでなく、地域におけるスポーツ現場においても貢献できることが明らかとなり、そして、スポーツ傷害予防活動においても意義がある。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205674959488
  • NII論文ID
    130007007657
  • DOI
    10.14902/kinkipt.2011.0.84.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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