膝屈曲角度と下腿回旋位の違いによる半腱様筋の収縮動態と膝屈曲トルクとの関連性
説明
【はじめに】膝屈曲筋である大腿二頭筋は下腿の外旋、半膜様筋と半腱様筋(以下ST)は下腿の内旋作用を有している。本研究では、下腿回旋肢位の違いが膝屈曲トルクとSTの収縮動態に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。<BR> 【対象と方法】対象は健常成人20名(男性10名、女性10名、平均年齢21.5±1.93歳)40肢とした。膝屈曲角度30度と90度の膝関節等尺性屈曲トルクを下腿最大内旋位と最大外旋位で測定した。収縮時間は20秒とし、最大トルク値を記録した。同時に超音波画像診断装置により、最大収縮時のST腱画の最大水平移動量を求めた。各肢位での最大屈曲トルクは体重で除しトルク体重比(以下TWR)とし、腱画移動量は大腿長で除して腱画移動率(以下RTID)とした。また、30度から90度への屈曲トルクの低下量を30度の屈曲トルクで除してトルク低下率(以下RTD)とした。統計学的有意水準は5%未満とした。<BR>【結果】TWRは内旋位・外旋位とも30度に対し90度で有意に低値を示し、90度では内旋位に対し外旋位で有意に高値を示した。RTIDは内・外旋位とも30度に対し90度で有意に高値を示し、いずれの屈曲角度も内旋位に対し外旋位で有意に低値を示した。RDTは外旋位で有意に低値を示した。RTIDとRDTとの間には、内・外旋位ともに相関関係が認められた。(r=0.42~0.50)。また、90度におけるTWRの内外旋差の平均値と95%信頼区間から、内旋優位群(以下IR90群)と90度外旋優位群(以下ER90群)とに群分けし、IR90群の17肢とER90群の23肢を比較した。まず、TWRはいずれの肢位でもIR90群とER90群との間に有意差はなかった。RTIDでは内旋位において90ER群に対し90IR群が有意に低値を示した。RDTは、90ER群では内旋位に対して外旋位の方が有意に低値を示したが、90IR群では内旋位と外旋位との間に有意な差はなかった。<BR>【考察】STが機能しやすい下腿内旋位において、RTIDとRTDとの間に相関関係が認められたのは、STの静止張力が深屈曲位でのトルク発揮に影響していると考えられた。また、外旋位でも同様の相関関係が認められたことは、回旋位に関わらず深屈曲トルクの発揮にはSTが影響していることが示唆された。したがって、STの屈曲トルクへの寄与率と他の膝屈曲筋の屈曲トルクへの寄与率は、STの静止張力の強め方によって左右されるのではないかと考えられた。しかし、内旋位におけるRTIDが、90ER群に対し90IR群で有意に低値を示したことは、深屈曲位でのSTの静止張力を高める為に下腿回旋位のコントロールが関連している可能性があるが、その機序は本研究では不明である。よって、STの深屈曲における機能的な役割を解明する上では更なる検討が必要である。
収録刊行物
-
- 近畿理学療法学術大会
-
近畿理学療法学術大会 2007 (0), 117-117, 2007
社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390001205675187328
-
- NII論文ID
- 130007007689
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可