重度膝関節屈曲拘縮例に対するリハビリテーション展開の再考
書誌事項
- タイトル別名
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- ~両膝関節伸展-120°であった症例を通して~
説明
【緒言】重度膝関節屈曲拘縮自体の劇的改善は困難である。かといって重度膝関節屈曲拘縮例は生活機能低下の悪循環を断ち切れないのではといった短絡的考えはリハビリテーション理念またICF概念には存在しない。重度膝関節屈曲拘縮例のリハビリテーションがベッド上で終始するような消極的展開方略があるとすれば考え直す必要があるのではないだろうか。そこで今回、重度膝関節屈曲拘縮例に対する積極的リハビリテーション展開の可能性を明確に提示した症例について本人・家族の同意を得た上で報告する。<BR> 【症例紹介】90歳、男性、平成9年脳梗塞発症し右上下肢不全麻痺を呈したが、平成19年8月時点で屋外見守り歩行可能な状態であった。しかしその後、状態悪化し同年12月8日脱水症にて入院。平成20年2月29日当施設入所。退院時、簡単な会話は可能であったが食事経鼻経管栄養施行、排泄オムツ使用・バルーン留置、諸動作に全介助要し寝たきり状態であった(FIM26点:運動項目13点・認知項目13点)。身体機能状態は、頭部挙上、ベッド柵把持可能な体幹・両上肢機能は残存していたが、両下肢では両膝関節伸展-120°、両股関節屈曲方向以外の関節可動域制限を著明に認める状態であった。また入院中リハビリテーション専門職による介入はない状態であった。<BR> 【理学療法士介入内容】両下肢関節可動域運動・寝返り練習から機能訓練を開始。両膝関節伸展-110°に改善した段階で臥床状態から2名介助法での標準型車椅子への移乗練習を開始。両膝関節伸展-100°となった段階でベッドマットレスを体圧分散タイプから標準タイプに変更し、起き上がり・端座位保持・端座位を経た2名介助法での移乗練習を開始。また当施設離床管理体制に基づき、離床時間は状態確認しながら随時延長し、日常行う移乗介助法は機能訓練時に安全に実施可能と判断できたものを全職種間共通の介助法としていった。なお機能訓練は週2回の頻度で実施していった。<BR> 【日常生活経過】入所32日:ベッド上にて食事経口摂取開始。入所35日:臥床状態から標準型車椅子への2名移乗介助法にておやつ時から離床を開始。入所40日:昼食時食堂と離床時間を延長、食事自己摂取可。入所47日:全食時食堂と離床時間を延長。入所179日:端座位を経た2名介助法に移乗介助法を変更。入所269日:端座位を経た1名介助法に移乗介助法を変更。両膝関節伸展-90°状態であったが、日中は離床した生活となり、車椅子自走での移動も可能となったことで生活空間は施設全体へと拡がった(FIM50点:運動項目27点・認知項目23点)。<BR> 【結語】廃用症候群モデルに対するリハビリテーション体制が依然未確立な昨今、本症例の様な重度膝関節屈曲拘縮例は後を絶たないのが実情である。そのため重度膝関節屈曲拘縮例に対しての積極的リハビリテーション展開を日々模索し、それに伴う生活支援が正確にできる施設のリハビリテーション体制構築に努めていくことも我々の責務であると感じている。
収録刊行物
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- 近畿理学療法学術大会
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近畿理学療法学術大会 2009 (0), 104-104, 2009
社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205675444480
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- NII論文ID
- 130007007787
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可