立位における一側下肢への側方体重移動が足部周囲筋群の筋活動に及ぼす影響

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  • ‐移動側足底の接地条件の違いによる検討‐

抄録

【はじめに】  変形性膝関節症患者の歩行ではLateral thrustが頻繁に認められる。Lateral thrust の構成要素には下腿外側傾斜があり、その制御には前脛骨筋と足部内反筋群の筋活動が関与する。我々は昨年の本学術大会にて、一側下肢への側方体重移動は前脛骨筋と足部内反筋群の筋活動による下腿外側傾斜の制動作用を促すために有用であると報告した。しかし、臨床にて側方体重移動を実施する際は、移動側足底の接地条件の違いにより足部周囲筋群の筋活動が変化することを経験する。そこで今回、側方体重移動時の移動側足底の接地条件の違いが、足部周囲筋群の筋活動に及ぼす影響を足底圧中心位置(以下、COP)と筋電図にて検討した。<BR> 【対象と方法】  対象は本研究の主旨に同意を得た健常者8名(8肢)とした。まず被験者の利き足を重心計のプレート上に置き立位姿勢をとらせた。測定課題は立位姿勢を開始肢位とし、そこから利き足側(以下、移動側)へ側方体重移動し立位姿勢に戻ることとした。この側方体重移動時に移動側足底が常に接地する課題(以下、足底接地課題)と、足底内側の離地を許可した課題(以下、内側離地課題)の2つの課題を設定した。それぞれの測定課題を連続的に3回実施することを1施行とし、各課題につき3施行させた。測定項目は移動側足部内のCOPと移動側前脛骨筋・足部内反筋群(後脛骨筋・長母趾屈筋・長趾屈筋)・腓骨筋群(長・短腓骨筋)の筋電図波形を記録した。測定課題中、体幹・骨盤の回旋は最小限とし両肩峰は水平に保持させた。側方移動距離は規定内で各被験者が最大移動できる距離とした。分析方法はCOP軌跡の時間的変化と導出筋の筋活動パターンを分析した。<BR> 【結果】  足底接地課題ではCOP足部外側(以下、小趾側)方向への移動開始と同時期に腓骨筋群・足部内反筋群が活動し、その後、前脛骨筋が活動した。また前脛骨筋・足部内反筋群の筋活動はCOP小趾側方向への移動に伴い増加傾向を示した。内側離地課題ではCOP小趾側方向への移動開始と同時期に足部内反筋群が活動し、前脛骨筋・腓骨筋群は筋活動を認めなかった。<BR> 【考察】  足底接地課題にて腓骨筋群は、足部回内作用により移動側足底内側を接地する目的で活動したと考えられる。本課題では下腿外側傾斜に伴い足部は回内するため、前脛骨筋・足部内反筋群の起始・停止部は離れる。この時、前脛骨筋・足部内反筋群は下腿外側傾斜を制動する目的で活動したと考えられる。内側離地課題では腓骨筋群の筋活動が認められず足部は回外する。この時、足部内反筋群は後足部を回外しCOPを小趾側方向へ誘導する目的で活動したと考えられる。本課題では前足部が回外するため、前脛骨筋は起始・停止間距離が変化せず筋活動を認めなかったと考えられる。<BR> 本研究から、側方体重移動にて前脛骨筋・足部内反筋群の筋活動による下腿外側傾斜の制動作用を促すためには、COP小趾側方向への移動時に腓骨筋群の筋活動により移動側足底を接地することが条件であると考えられる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205676451712
  • NII論文ID
    130007007974
  • DOI
    10.14902/kinkipt.2009.0.94.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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