水位変動下における両生植物ヒメホタルイの種子からの定着と水散布の役割
書誌事項
- タイトル別名
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- Water dispersal and establishment from seed under fluctuating water levels in an amphibious plant <i>Schoenoplectus lineolatus</i>
抄録
両生植物は、水位変動に対応して水中形と陸生形をとることができる水辺に生育する植物のグループである。両生植物の1種であるヒメホタルイ(Schoenoplectus lineolatus)は、水位が低下して陸生形となったとき成長ならびに繁殖が最適になることが今までの研究から明らかにされている。特に、有性繁殖は水中では起こらず、開花シーズン中の水位低下を待って開花・結実する。<br><br> このようにして生産された種子は、その後、水位上昇にさらされるかもしれない。ヒメホタルイの種子による定着は、水位変動にどのように影響を受けるのであろうか?また多くの水生植物が水散布を行っており、両生植物においては水位変動と水散布が密接に関係している可能性がある。本研究では、ヒメタホルイの自生地および圃場での栽培実験により、(1)種子の発芽および実生の生存と水位との関係を明らかにし、(2)種子からの定着のために水散布が果たす役割を検討した。<br><br> ヒメホタルイの自生地で4段階の水深(実験開始時;0, 0.3, 0.7, 1.1m)の栽培実験を行った結果、種子の発芽および実生の生存ともに水深0mで最も良好であった。さらに夏の水位低下によって干上がると水深0.3mと0.7mにおいても種子の発芽数が再び増加した。またヒメホタルイの種子は、水上の花穂から脱落した場合は水面に浮遊したが、いったん水中に沈むとほとんどの種子が再び浮上することはなく水底に沈んだ。<br><br> 以上の結果から、ヒメホタルイの種子は水位低下時を待って発芽し定着する特性を持っていることが明らかとなった。種子散布の後に水位が上昇しても、水面に浮遊している種子は水際に運ばれて発芽しその実生は定着できる。水散布されずに水没した種子は、次の水位低下を待って定着するのだろう。<br><br>
収録刊行物
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- 日本生態学会大会講演要旨集
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日本生態学会大会講演要旨集 ESJ51 (0), 818-818, 2004
日本生態学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205689713280
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- NII論文ID
- 130007010741
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可