葉寿命や葉質からみた常緑草本の類型

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Classification of the evergreen herbaceous plants based on the leaf longivity and the leaf softness

抄録

常緑性とは年間を通じて成葉がみられる性質である。日本本土に生育する常緑性の樹種(常緑樹)では、葉の寿命は通常1年以上で、葉質は革質であり、一斉開葉を示す傾向があることが知られている。一方、常緑草本については葉寿命についての調査例はほとんどない。そこで、演者は千葉県や東京都の低地(暖温帯域)の、おもに林床・林縁に生育する常緑性草本約40種について葉寿命、葉質、開葉パターンなどを調べたところ、およそ以下のような3タイプが認められた。<br> ヤブラン型:葉寿命は1年以上。葉は革質で全縁。一斉開葉を示す。多くは地上に茎をほとんど持たない(根生葉のみ)。ヤブラン、ヒメヤブラン、オオバジャノヒゲ、イチヤクソウ、スハマソウなど。属レベルで常緑性を示す。<br> キミズ型:葉寿命は1年以上。葉は非革質。多くは全縁葉。順次開葉を示し、地上に茎をもつ種が多い。キミズ、サツマイナモリ、モロコシソウ、アケボノシュスラン、ベニシュスラン、ハナミョウガなど。南関東を北限とする種が多い<br> タチツボスミレ型(仮称:連緑性):葉寿命は8カ月以下。葉は非革質で非全縁。順次開葉。すなわち、短命な葉(夏緑葉と冬緑葉など)をリレー的に着け替えることで成葉を1年中保持する。地上茎の有無は様々だが冬期には地上茎をほとんどもたない。タチツボスミレ、アオイスミレ、セントウソウ、ダイコンソウ、ヤマルリソウ、アキノタムラソウ、シロヨメナ、アズマヤマアザミなど。上記2型に比べ、夏緑林や林縁など光環境に恵まれたところに生育する種が多い。また、冷温帯にまで分布が及んだり、同属に夏緑性の種が認められることが多い。<br> ヤブラン型の葉の特性はシイ・カシ類などの常緑樹に近似するが、キミズ型、タチツボスミレ型は日本本土の樹木には例がなく、草本の常緑性は樹木に比べて多様であるといえる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205689743744
  • NII論文ID
    130007010796
  • DOI
    10.14848/esj.esj51.0.822.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ