生育段階と光条件の違いによるコナラの樹冠形成パターン

書誌事項

タイトル別名
  • crown development pattern to difference of the growth stage and light environment in Quercus serrata

説明

これまでシュート伸長(樹冠拡張)様式に関する様々な研究がなされており、空間を占有していくには生育場所の明るさに適応的な当年生シュートの伸長様式や樹冠の形成が重要であることが示されてきた。本研究では、コナラのラマスシュート(以下、LSと略記)を伸長する性質に注目し、個体の光条件に加えて、これまで注目されることが少なかった生育段階および枝レベルの光条件の樹冠形成への影響について検証した。様々なサイズ・光環境に生育する個体を選び、各個体から当年1次枝(以下、1F)をサンプリングして、枝上の光条件を測定した。シュート伸長が完了した秋に、1Fの親枝である前年枝を含めて当年枝(1FとLS)を刈り取り、1FおよびLSの伸長量を測定した。枝レベルの光条件がよいほど1Fが長くLSもよく発生したため、合計の当年枝の伸長量も明るい枝ほど大きかった。また、当年枝の伸長パターンは、個体レベルの光条件だけでなく生育段階による差が顕著にみられた。稚樹個体(樹高2m以下)は、1回のフラッシュは短いものの、樹冠内で明るい枝ほど何回もLSを出すという順次型の伸長・開葉を示した。これにより、樹冠内の明るい条件の枝ほど急速に樹冠拡張することが可能となった。この性質は、稚樹期のコナラの生存に有利に働くと考えられ、低い耐陰性を補っていることが示唆された。若木個体(樹高3_から_6m)は、稚樹より枝が長く大きい葉の1F(樹冠拡張・葉群維持機能の両面に優れる)をもっていた。また、樹冠内の暗い部分からも長く伸長する1Fがみられ、LS長は枝レベルの光条件との間に相関がなかった。つまり、稚樹よりもLS依存性が低く、安定した環境下において一斉型の長い1Fによって確実に樹冠拡張を行うという戦略をもっていることが示唆された。成木(樹高15m)は、ほぼ100%の光条件であるにもかかわらず、1F・LSの長さは短かったことから、光をめぐる樹冠拡張が制限要因ではないことが示唆された。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205689844224
  • NII論文ID
    130007010944
  • DOI
    10.14848/esj.esj52.0.662.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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