ウダイカンバにおける短枝の長枝化と樹冠構造上の意義
-
- 石原 正恵
- 京都大学農学研究科
書誌事項
- タイトル別名
-
- Reversion of short shoots to long shoot habit and its significance in crown architecture of <i>Betula maximowicziana</i>
説明
さまざまな樹木では、当年枝が短枝と長枝の二型に分化している。若齢個体において、樹冠表面や上層で長枝が毎年生産され、樹冠下層で短枝が多く生産されることが知られている。このような樹冠発達様式は、効率的な物質生産や速い樹冠拡張を可能にすると考えられている。しかし、成熟木では樹冠拡張のコストが利得よりも増加し、樹冠拡張を抑えつつ、葉を維持することが重要である。したがって若齢木とは異なる樹冠発達様式がみられると予想される。実際、ウダイカンバの成熟木では、短枝から翌年長枝が伸長する現象(短枝の長枝化)がみられた。そこで、成熟木の樹冠発達様式における長・短枝の意義を明らかにするため、ウダイカンバ成熟木5個体を用いて、17から52年生の枝から直接のびている1年生から50年生の枝450本の成長履歴を調査した。 短枝由来の枝は全調査枝の58%、長枝由来の枝は41%、後発枝(休眠芽から生じた枝)由来と推定された枝は1%であった。短枝由来の枝の44%は、過去に一回以上長枝化しており、25年生以上の短枝由来の枝はすべて長枝化していた。これらのことから、短枝由来の枝は高い割合で長枝化し、長期間樹冠内に存在しつづけると考えられる。 長枝化した短枝のうち、1、2年後に長枝化する場合と、6年以上短枝であり続けてから長枝化する場合が多かった。6年以上短枝であってから長枝化した枝は、おなじ部位から伸びた長枝由来の枝に比べ、枝軸長や基部直径が小さかった。このことは、長枝由来の枝が大きくなった後に、短枝由来の枝が長枝をのばし、樹冠内部で枝構造をつくっていることを意味する。このような樹冠発達様式は、樹冠拡大とともに空洞化する樹冠内部に葉を配置し、樹冠拡大が停滞した場合に個体の葉量を維持する効果があると考えられる。
収録刊行物
-
- 日本生態学会大会講演要旨集
-
日本生態学会大会講演要旨集 ESJ52 (0), 663-663, 2005
日本生態学会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390001205689846144
-
- NII論文ID
- 130007010948
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可