トチノキの開花結実における流域内空間構造の影響
書誌事項
- タイトル別名
-
- Topographic effects of watershed on spatial structure and reproduction of an <i>Aesculus turbinata</i> population
説明
トチノキは渓畔林の主要な構成種であり,個体の分布が流域内の谷の配置や形状などの空間構造に大きく依存する.また,多数の雄花と少数の両性花からなる花序をつけマルハナバチなどによって送粉される.したがって,流域内の空間構造が開花結実に影響を与えると予想される.<br> 京都大学芦生研究林内の上谷の上流部110haを調査流域とした.流域内は上谷の本流からいくつかの小さな谷が分かれ,谷の幅や形状によってトチノキの個体密度が変化する.胸高直径20cm以上のトチノキ276個体の開花と結実を2003年と2004年に調査した.個体ごとに,花序がついている当年枝の割合を観察して着花率とした.別にトラップを用いた測定により得た推定式を用いて雄花と両性花を含めた着花数を求めた.各個体の樹冠下に調査枠を4個設置し,落下した果皮数から種子生産数を推定し結実数とした.推定式は一部の個体について全ての果皮数を測定して得た.着花数に対する結実数の割合を結実率とした.<br> 着花数の全個体の合計は2003年より2004年が多く,結実数は逆に2003年のほうが多かった.各個体の結実率とその個体からある距離内にある個体の着花数の合計との相関係数は距離に対して山型となり,相関係数が最大となる距離は全体の着花数が少なかった2003年のほうが,2004年よりも長かった.このことは,ある個体にとっての結実率に有効な送粉範囲と開花量の存在を示唆した.また,2004年について周囲の個体密度の高い個体と低い個体のグループに分けた同様の解析では,個体密度の高いグループのほうが相関係数の最大となる距離が短かった.流域内の谷の幅や形状などの空間構造に依存した個体密度の大小が送粉範囲や結実率に影響することが示唆された.
収録刊行物
-
- 日本生態学会大会講演要旨集
-
日本生態学会大会講演要旨集 ESJ52 (0), 661-661, 2005
日本生態学会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390001205689877760
-
- NII論文ID
- 130007011005
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可