琵琶湖の本湖および内湖におけるヨシのマイクロサテライトマーカーによる遺伝構造の解析

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タイトル別名
  • Genetic structure of <i>Phragmites australis</i> in Lake Biwa

抄録

琵琶湖の本湖および内湖に分布する19集団のヨシ(Phragmites australis)について、5遺伝子座についてのマイクロサテライトマーカー(Saltonstall, 2003)を用いた遺伝分析を行い、各地域集団におけるクローン構造や遺伝的多様性、各集団の遺伝的距離について解析を行った。各集団について約30 ラメットを分析したところ、genet数は3から15と大きく異なり、genet数をramet数で割ったG/Nは0.10から0.52であった。また, Simpson’Dは0.43から0.93, Fager’sEは0.24から0.92、多型を持つ遺伝子座の割合は0.24から0.59の値を示した。これらの結果から、各地域集団のクローン構造や遺伝的多様性は集団間で大きく異なっていることが明らかになり、各集団における生育環境や火入れ・刈り取り等の人為的攪乱、倍数性の違いに伴う成長・繁殖特性の違い等を反映しているものと考えられた。19種のクローナル植物で報告された結果と比較すると、G/NおよびSimpson’Dについては19種の平均値よりも若干高い値、Fager’sEについてはほぼ同じ値であった。また、遺伝構造については、遺伝的距離に基づくUPGMA法によるクラスター分析の結果、琵琶湖集団内に明瞭な遺伝構造は認められなかった。地域集団間の地理的距離と遺伝的距離の関係から、Isolation-by-distanceは認められなかった。さらに、AMOVA解析の結果、琵琶湖地域の全遺伝的変異のうち98.1%は個体群内、1.9%は集団間で保持されていることが明らかになった。これらの結果から、琵琶湖地域におけるヨシ集団間の遺伝的分化度は小さく、花粉や種子等を介した集団間のジーンフローが非常に大きい、または大きかったことが示唆された。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205689908352
  • NII論文ID
    130007011058
  • DOI
    10.14848/esj.esj52.0.104.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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