アオウミガメ雌成体の摂餌域利用における個体変異

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タイトル別名
  • Individual variation in feeding habitat use by adult female green turtles

抄録

【目的】従来、アオウミガメは産卵期が終わると、浅海で主に海藻を食べていると考えられてきた。しかし最近の衛星追跡の結果、外洋にも回遊することがわかってきた。外洋では未成熟期のように主に浮遊生物を食べていると予想される。これらのことは、アカウミガメ同様、雌アオウミガメにも生活史多型が存在することを示唆する。本研究では、卵黄の炭素・窒素安定同位体(δ13C, δ15N)分析から、小笠原諸島で産卵するアオウミガメの餌生物を推定することを目的とした。また衛星追跡から回遊経路を明らかし、アオウミガメ雌成体の摂餌域利用の実態を検討した。<br>【方法】2003及び2004年の5月から7月に、小笠原諸島父島及び母島で産卵を行った89個体の標準直甲長を測定し、卵を採取した。卵黄のδ13C, δ15Nを、質量分析計で測定した。産卵期末の8月中旬に、小笠原海洋センターイケスで人工孵化増殖用の卵採取のために畜養されていた4頭に衛星用電波発信器を装着して放流し、回遊行動を追跡した。<br>【結果及び考察】卵黄と餌生物のδ13C, δ15Nの比較から、小笠原で産卵する個体の66%が浅海を、34%が外洋を摂餌域としているものと推察された。体サイズと卵黄のδ13C, δ15Nに相関がなかったので、アオウミガメ雌成体には、アカウミガメでみられたような体サイズによって摂餌域利用が異なる現象は存在しないものと考えられる。衛星追跡期間は30から41日であった。同位体分析から浅海を摂餌域としていると推察された2頭からの発信は、伊豆諸島近辺で途絶えた。また外洋を摂餌域としている2頭のうち、1頭からの発信は外洋で、もう1頭からの発信は九州南岸で途絶えた。追跡期間が短かったため、同位体分析と衛星追跡の結果は完全には一致しなかった。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205689933824
  • NII論文ID
    130007011102
  • DOI
    10.14848/esj.esj52.0.114.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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