チャルメルソウ属の異質倍数性に伴う形態進化及び送粉様式の推移

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タイトル別名
  • Effects of Allopolyploidy on Phenotypic Evolution and Pollination Systems in <i>Mitella</i> (Saxifragaceae)

抄録

一般にゲノムの重複とそれに伴う遺伝子の機能分化は生物進化に極めて重要な働きを果たしていると考えられている。特に、植物においては倍数体が広く見られることから、古くから倍数化が種分化の原動力となると考えられてきた。<br>日本列島で多様化したユキノシタ科チャルメルソウ節は2n=28の核型を持ち明らかに倍数体起源である。ゆえに倍数性が種の多様性を創出するメカニズムを調べる上で、本群は絶好のモデルとなると考えられる。<br>分子系統学的研究から、この倍数化イベントの詳細が次第に明らかになってきた。すなわち、1)葉緑体2領域及び核4領域の全てがチャルメルソウ節の単系統性を支持している。2)チャルメルソウ節の核遺伝子GS2(葉緑体発現型グルタミン合成酵素)のAコピーは北米産2媒体種M. pentandraと姉妹群をなす。以上のことから、この系統群はM. pentandraと未だ明らかでない2媒体種とのたった一回の交雑、倍数化に由来する異質4倍体であることが示唆された。<br>さらに、倍数化が送粉様式やそれに伴う花形態の進化にどう影響するかを明らかにするため、チャルメルソウ節およびその両親種である2倍体種で送粉様式を調べたところ、キノコバエによる特異的な送粉様式は倍数性に関わらず高度に保存されていた。興味深いことに、2倍体の近縁種のほとんどは自家不和合性であるのに対し、チャルメルソウ節はおそらく全種が自家和合性を有し、一部は性表現を獲得していた。このパターンはナス科で報告されているものと全く同一である。ゆえに、少なくとも配偶体型自家不和合性を持つ系統では倍数化→自家不和合性の欠失→性表現の獲得という進化のトレンドが存在するかもしれない。この他にも、異質倍数性が本群の多様性創出にどのように関わっているかについて総合的に考察したい。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205690016256
  • NII論文ID
    130007011253
  • DOI
    10.14848/esj.esj52.0.752.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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