モンゴルステップにおける放牧の有無が植物群落構造におよぼす影響

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タイトル別名
  • Effects of grazing on the plant community stracture of steppe in Mongolia

抄録

2001年度より科学技術振興事業団戦略的基礎研究推進事業(CREST)の研究プロジェクト「東北アジア植生変遷域の水循環と生物・大気圏の相互作用の解明」(RAISE)が開始された。モンゴルの乾燥・半乾燥地域は降水量の減少と気温の上昇が確認されており、過放牧による草原の沙漠化の危険性も指摘されている。本研究は放牧が続く草原と柵を設置し放牧を禁止してから一年経過した草原を比較し、放牧が植物群落構造におよぼす影響を明らかにすることを目的とする。<br> 植生調査は6月から9月にかけて毎月24ヶ所(柵の内外でそれぞれ12コドラート)で行った。出現した全ての種を記録し、群落構造として全体の植被率・種ごとの優占度・種ごとの平均および最大植物高を記録した。その後植物体地上部を刈り取り、現存量を測定し、コドラート内のリターを採集した。<br> 放牧の有無による種組成は、観測を開始した6月から9月にかけて次第に異なることがわかった。<br> 放牧の有無が群落構造におよぼす影響を、植被率については6月でのみ有意差が見られた。種ごとの平均植物高・種ごとの最大植物高・リター量は7月から9月にかけて有意差が見られた。現存量は7月と9月で有意差が見られた。<br> 柵を設けて放牧を制限することにより物理的な影響が減少し、柵の内外で群落構造に違いが現れたと考えられる。しかし柵の内外で種組成は大きな変化をしていなかった。すなわち植物体への物理的な生育阻害が減少することで量的な植生回復が始まり、植物体の生育環境が変化することにより種組成が変化し質的な植生回復が進むと考えられた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205690054400
  • NII論文ID
    130007011320
  • DOI
    10.14848/esj.esj52.0.720.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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