栗駒山におけるオオシラビソ小林分の齢構成
書誌事項
- タイトル別名
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- Age Distribution of Small <i>Abies mariesii</i> forests on Mt.Kurikoma
抄録
<br> 栗駒山におけるオオシラビソ林の分布は、西稜線の一角にある秣岳の非常に狭い範囲に限られている。付近の花粉分析ではAbies花粉が検出されておらず、林分形成当初から現在のような小林分であるとされている。このオオシラビソ林の存在は、最終氷期以降に東北地方の山岳でおこったオオシラビソ林の分布拡大のメカニズムを明らかにする上では見逃すことのできない存在である。今回、この小林分内の齢構成の検討をおこなったので報告する。<br> オオシラビソ林の林床は、表層物質が厚く堆積し、チシマザサが卓越するササ型林床と、岩塊が表層に剥き出しになり、コケがその上を覆っているコケ型林床の2タイプが存在した。どの林分内も、齢構成は実生の数が多く高齢木になるにつれて個体数が減少する逆J字型の構造であった。また,連続的な齢構成を示し、250年を超える個体も広い範囲で確認された。<br> どの地点の齢構成でも、100年と200年前後にモードが存在し、他の世代よりも個体数が多くなっていた。年輪幅の計測によると、100年と200年前後の年輪幅が極端に狭くなっている個体が多かった。<br> 以上のように、樹齢250年を超える高齢木が存在しており、連続的な齢構成を示していることから、少なくとも250年前にはオオシラビソ林が成立し、現在まで維持されてきたと判断される。齢構成が逆J字型であることから、後継個体も連続しており、今後もこれらのオオシラビソ林分は維持されていくことが期待される。<br> 100年、200年前後の年齢を示す個体数が多いという事実は、その時期にオオシラビソの定着が特に進んだことを示唆するが、コケ型林床の林内においてもその傾向がみられることから、ササ枯れによる定着の増加によるものではないと考えられる。定着個体数の増加時期における、年輪幅の狭まりとの因果関係が注目される。
収録刊行物
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- 日本生態学会大会講演要旨集
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日本生態学会大会講演要旨集 ESJ51 (0), 416-416, 2004
日本生態学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205690092032
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- NII論文ID
- 130007011387
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可