外生菌根菌における宿主特異性の系統進化-オニイグチ属菌の分子系統解析を用いて-

DOI
  • 佐藤 博俊
    京都大学生態学研究センター
  • 湯本 貴和
    大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所

書誌事項

タイトル別名
  • Phylogenetic evolution of ectomycorrhizal host specificity based on molecular phylogenetic analysis of genus Strobilomyces

抄録

外生菌根はブナ科・マツ科・フタバガキ科など温帯_から_熱帯域において優占する樹種が形成する菌根であり、外生菌根菌における宿主特異性を明らかにすることは菌と樹木との相互作用および森林の動態を理解する上で重要である。しかし、これまで外生菌根菌における宿主特異性についての研究は極めて限られており、そのほとんどが宿主としてマツ・ユーカリなどごく一部の樹種のみを対象としたものだった。また、菌類では隠蔽種が多数存在するとされており、これまでの研究は隠蔽種をほとんど考慮していないことから、多種混同による宿主特異性の過小評価をしていた可能性が高い。<br>本研究では、研究材料に、属全体でブナ科・マツ科といった幅広い宿主範囲を持ち、温帯_から_熱帯域に広く分布するオニイグチ属菌を選んだ。隠蔽種の存在による宿主特異性の過小評価を検証するため、形態観察・シークエンスによる隠蔽種の解析を行った。外生菌根における宿主特異性の系統進化を明らかにするため、28SrRNA領域のシークエンスによる分子系統解析、ハビタット調査による宿主特異性の評価を行った。この結果、オニイグチ属には隠蔽種が存在し、これまで総じて宿主特異性が低いとされてきたオニイグチ属菌において、宿主特異性の高い種群と低い種群が存在することがわかった。また、オニイグチ属の分子系統樹において、宿主特異性の高い種群は明確な単系統性であることが明らかになった。これは、高い宿主特異性を獲得する進化が不可逆的であることを示唆する結果である。これに加え、宿主特異性の高い種群は低い種群に比べ、地域集団ごとに明確なクレードを形成する傾向があることがわかった。このことは、宿主特異性の高い種群は、宿主の分布パターンなどによって菌が分散の制限を受けていることを示唆している。これらの結果は、外生菌根菌の宿主特異性について新しい知見である。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205690130816
  • NII論文ID
    130007011456
  • DOI
    10.14848/esj.esj51.0.396.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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