イバン族が利用する様々な林における小型哺乳類相(林床)
書誌事項
- タイトル別名
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- Terrestrial small mammals at various forests in Sarawak, Malaysia
説明
熱帯林は急速に消失・変貌しており、それにともなった生物多様性の減少は重要な地球環境問題のひとつである。本研究では人間活動による森林景観の変化が、散布後の種子・実生の主な食害者である小型哺乳類と種子食害強度に与える影響の評価を目的としている。<br>2003年8月、共同研究者と共に焼畑休閑林(1年後、5-6年後、20年後、30年以上)、孤立林、ゴム園、及び原生林(国立公園内)に、10×100mのプロットを合計33カ所設定した。そのうち21カ所のプロットで、記号放逐法(連続5晩)による小型哺乳類相調査と持ち去り実験による種子食害圧調査を実施した。持ち去り実験の材料にはジャックフルーツ(Artocarpus heterophyllus, クワ科)の種子を用い、残存種子数とその状態を5日間毎日確認した。<br>調査期間中、4科を含む合計20種(78個体)の小型哺乳類が捕獲された。最も出現頻度の高かった動物(17個体)は、オオツパイ(Tupaia tana)とチャイロスンダトゲネズミ(Maxomys rajah)であり、前者はゴム園で、後者は原生林に多く生息する傾向が見られた。出現種数は焼畑休閑林(5-6年後)で最も高く、ついで孤立林、原生林の順であった。一方で出現個体数は原生林が最も高く、2番目に焼畑休閑林(5-6年後)、3番目はゴム園となった。種子食害率(持ち去り+食害)は同じく原生林で最も高く、2番目に焼畑休閑林(5-6年後)で、3番目は孤立林であった。<br>まだ1度の調査結果であるが、原生林や孤立林のみならず焼畑休閑林(5-6年後)やゴム園で小型哺乳類の活動が活発であることが分かった。この原因としては、焼畑休閑林(5-6年後)にイチジクなどの結実木が多いことや、旧ゴム園には年間を通してゴムの実が存在していることが関係していると考えられる。また一斉開花時に小型哺乳類相や種子食害圧が各森林でどのように変化するのかも興味深い。さらに今回の発表では林床の小型哺乳類のみを対象としたが、今後は樹上性の哺乳類も対象に加え、種子と種子食動物の相互作用を網羅的に捉えたいと考えている。<br>
収録刊行物
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- 日本生態学会大会講演要旨集
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日本生態学会大会講演要旨集 ESJ51 (0), 369-369, 2004
日本生態学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205690369408
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- NII論文ID
- 130007011883
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可