八甲田山のブナ帯から亜高山帯における湿原および林内表層堆積物の花粉組成と周辺植生の関係

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タイトル別名
  • Vegetation-pollen relationship in forests and bogs from the mountain zone to the sub-alpine zone in Hakkoda Mountains

抄録

花粉分析法において,より正確な植生復元を行うには,花粉組成と植生の関係を明らかにしておくことが重要である。特に,日本のような山岳地域では,亜高山帯域において,低標高地から飛来する花粉によって花粉組成が影響を受け,誤った推定結果を示す傾向にあることが指摘されている(Takahara et al., 2000)。<br> そこで本研究では,上記の問題を解決し,堆積盆の大きさによる花粉組成の違いも含めて検討するため,八甲田山のブナ帯上部から亜高山帯において,大きさの異なる湿原や閉鎖した林内において表層堆積物を採取し,さらに,試料採取地点の周辺で植生調査を行った。植生と花粉組成の関係を検討する際には,特に,八甲田山の代表的な植生帯(ハイマツ群落,オオシラビソ林,ブナ林)に由来する花粉粒数の比に着目して解析した。ここでは,後述のようにPinus, Abies, Fagus花粉の比を用いた。結果は以下の通りである。<br> 林内表層試料では,ハイマツ群落でPinus花粉が40-50%,オオシラビソ林では低率ながらAbies花粉が5-14%,また,ブナ林ではFagus花粉が60%以上検出され,各林分の森林型に特徴的な花粉組成が認められた。一方,湿原表層試料では,亜高山帯とブナ帯における花粉組成は類似し,両者の花粉組成の違いを特徴づけるのは,Abies花粉出現率だけであった。<br> 各試料採取地点の周辺植生については,Abies/Fagus比を用いると,ブナ林とオオシラビソ林を判別できたが,ハイマツ群落とオオシラビソ林は判別できなかった。しかしPinus/Abies比を用いることで,ハイマツ群落とオオシラビソ林を判別することができた。以上のように,八甲田山において,表層堆積物中の花粉のうちAbies/Fagus, Pinus/Abies比を用いることで,周辺植生をハイマツ群落,オオシラビソ林,ブナ林に判別することができた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205690599552
  • NII論文ID
    130007012294
  • DOI
    10.14848/esj.esj51.0.608.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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