屋敷林の構造_-_地域による相違_-_
書誌事項
- タイトル別名
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- A difference in the farmstead groves structure of some district
説明
屋敷林とは家屋を取り囲むように敷地内に設けられた樹木群で,厳しい気候や自然災害などから家屋を守ること(防風・防砂・防備機能),燃料や建築材を確保することなどを目的として作られた森林である。特に季節風が強い地域や扇状地,沖積平野などにみられ,散居村では「緑の島」を形成している。<br> 本研究では,農村地域における屋敷林の役割を生物多様性の維持や創出機能という視点から明らかにすることを目的としている。ここでは典型的な屋敷林がみられる4地域(岩手県胆沢町,山形県飯豊町,富山県砺波市,島根県斐川町)において,毎木調査や植生調査,聞き取り調査を行った結果を報告する。<br> それぞれの地域の屋敷林の特徴は次のようである。胆沢町:イグネと呼ばれ,北側と西側に配置され,大規模なものが多い。飯豊町:特別な名称はなく,西側に配置され,家屋が視認できる程度に列植されている,砺波市:カイニュウと呼ばれ,南側と西側に配置(北側もある)され,家屋が視認できない程度に列植されている。斐川町:ツイジマツと呼ばれるタイプがあり,北側と西側に配置され,生垣状に刈り込む。<br> 各地域の屋敷林を構成する樹木は胆沢町(調査地9ヵ所)で総出現種数42種,屋敷あたり平均13.3種,飯豊町(10ヵ所)で44種,9.8種,砺波市(5ヵ所)で54種,17.8種,斐川町(4ヵ所)で29種,8.8種であった。出現頻度が高い上位の樹種は胆沢町でスギ,クリ,ホオノキ,飯豊町でスギ,クリ,アカマツ,砺波市でスギ,カキノキ,ウラジロガシ,斐川町でモチノキ,クロマツ,マテバジイであった。照葉樹林帯に属する斐川町を除き,夏緑広葉樹林帯に属する3地域ではすべての屋敷でスギに出現し,優占種でもあった。スギのように植栽された樹種を除く,各地に出現する植物群はその地域の潜在植生の要素が含まれ,多様な植物から屋敷林は構成されていることがわかった。
収録刊行物
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- 日本生態学会大会講演要旨集
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日本生態学会大会講演要旨集 ESJ51 (0), 271-271, 2004
日本生態学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205690737152
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- NII論文ID
- 130007012540
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可