ヤマアカガエルとニホンアカガエル幼生の種間競争:食物条件が競争の結果に与える影響
書誌事項
- タイトル別名
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- Interspecific competition between <i>Rana japonica</i> and <i>Rana ornativentris</i>larvae:The effect of food condition on consequences of the competition
説明
競争種が存在する場合、ある種の資源利用パターンが変化し、基本ニッチよりも狭い範囲に実現ニッチを制限することで競争を回避する事例はよく知られている。水界においては摂食活動により栄養塩が放出される栄養塩回帰の重要性が指摘されており、食物におけるニッチシフトが栄養塩回帰の量や質を改変することで、種間競争の影響は群集内の他の種に波及する可能性がある。ニホンアカガエルとヤマアカガエルは生息域が重複し、幼生の生態的特性は類似しているにも関わらず、両種の幼生が同所的に高密度で生息することは珍しくない。両種の間には食物ニッチの違いがあることが示唆されており(岩井・加賀谷,第51大会)、ニッチシフトにより競争が緩和されている可能性がある。食物の摂取速度や消化力は項目や種で異なり、それにより栄養塩回帰の効果も変化するため、ニッチシフトの可能性を検討するのは興味深い。 本研究では、両種幼生をそれぞれ単独、両種混合の2条件、食物としてイトミミズ、藻類のそれぞれ単独、混合の3条件、計6条件で室内飼育し、次の仮説を検討した。(1) 両種幼生の基本食物ニッチに違いはあるか? (2) (1)がある場合、食物項目により種間競争の強さに差はあるか? (3) (2)がある場合,両方の餌が混在するとニッチシフトにより種間競争は緩和されるか? 摂食食物は、腸長/体長により評価した。 両種ともミミズ食より藻類食で成長が悪かったが,ニホンアカガエルの方がその傾向は強く、種間で食物ニッチの違いが認められた。種間競争の影響は、藻類のみ与えた場合のほうがミミズのみを与えた場合よりも大きく、藻類食のニホンアカガエルは、単独種飼育よりも混合種飼育で成長は有意に低かった。しかしながら、ミミズと藻類の両方を与えた場合には、ニッチシフトによる競争の緩和は認められず、むしろ種間競争の影響は大きかった。以上の結果は、食物資源の多様さよりも共通する好適資源の量が、両種の種間競争の結果に影響することを示唆するものである。
収録刊行物
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- 日本生態学会大会講演要旨集
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日本生態学会大会講演要旨集 ESJ52 (0), 380-380, 2005
日本生態学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205690863616
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- NII論文ID
- 130007012685
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可