「地域の知」の統合に向けて

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  • Toward the Integration of Regional Knowledge

抄録

<BR>1.「地域の知」<BR>  現代社会が抱える諸問題解決のために、社会、経済、文化、自然などの様々な事象を表現する地域情報は基盤情報となる。「地域の知」とは、各地の行政機関や民間の研究機関が蓄積した情報や、地域に生きる人々が持つ情報、研究者が築き上げてきた情報や知識が含まれる。「地域の知」はこれまで、断片的で、共有化されず、時の流れと共に失われてきた。「地域の知」を正の遺産として継承するために、以下の整備が必要である。<BR> 2.「地域の知」を充実するための制度整備<BR>  官庁統計のデジタルへの更なる推進、保存期間の見直しなどを行い、地域情報を蓄積する制度の整備が必要である。また、保存・蓄積されている情報を、ニーズに応じて再集計できる仕組みの整備が求められる。位置の高精度化を進め、地図、基本的な最小集計単位の空間データの不整合を解消し、時系列的に比較可能にする必要がある。また、地理参照の整備を行い、町丁目・字コードの利用条件や、住所照合の一致度を向上させる仕組みを検討すべきである。<BR>  民間機関、研究者などが収集した情報を蓄積し、共有化するための制度も整備すべきである。データベース作成が学術的業績になる仕組みや、データベースを評価する仕組みも打ち立てるべきである。<BR> 3.「地域の知」統合のための技術開発と研究推進<BR>  「地域の知」を収集、保存、検索、出力などを効率よく行っていくためには、操作システムの開発が必要となる。そこで、以下の機能を持つ「地域情報の共有プラットフォーム」を早急に開発すべきである。<BR> (1)地理参照可能;(2)各種の時系列(暦)と時間に対応;(3)図形(地域)、テキスト、画像、動画、音声、質的データなど様々な情報を一元的に管理;(4)多言語に対応;(5)地理情報検索、暦・時間検索・テーマ検索ができる;(6)視覚化可能;(7)データベースが共有化可能。<BR>  地域情報の詳細化と空間分析手法の高度化の研究も必要である。センサー技術を利用した地域情報の取得に関する研究、地域情報の視覚化に関する研究、次世代GISの研究などにより、地域情報の効果的な取得、表示、分析に関する研究を推進していく必要がある。<BR> 4.「地域の知」と社会との関わり<BR>  地域情報の詳細化は、個人と社会の利害関係が対立も懸念され、倫理的側面の検討、法整備が必要になる。<BR>  地域情報の発信者は、地域に携わる誰もが担える。地域情報の整備に関しては、単に公的な機関だけでなく、民間も貢献し、裨益しうる制度も重要である。「地域の語り部」のような、誰もが貢献できる仕組みの構築も必要である。<BR>  「地域の知」の充実は、教育や地域活動にも貴重な資源となり、相互理解や情報格差是正につながる。学校教育における地図やGISを利用した地域情報教育の推進、地域情報をNPOや民間企業などが地域資源として利活用することの促進、そのための産官学連携による地域情報利活用のための地域情報センターの設置などによって、格段に進むことが期待できる。また、常時最新の情報に入れ替えて常に鮮度の高い主題図を集約した電子版地域情報アトラスの刊行も教育や地域活動に有効であろう。<BR> 5.「地域の知」の統合の実現<BR>  「地域情報の共有プラットフォーム」開発に対しては、技術的検討およびこれらの運営環境の検討を行うために、10年間程度の「地域情報の共有プラットフォーム」開発プロジェクトを起こす必要がある。そのために、機関横断型のコンソーシアムの設立が必要になると思われる。共有プラットフォームを活かした「地域の知」の蓄積とその応用は、重要な国際貢献の柱になりうる。<BR><BR> 註 本稿の内容は日本学術会議地域情報分科会の成果をまとめたものである。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205691582336
  • NII論文ID
    130007013687
  • DOI
    10.14866/ajg.2008s.0.248.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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