山地河川における河床勾配の解析と遷急区間の抽出!)本州中部を例に!)

書誌事項

タイトル別名
  • Analysis of stream gradients and knickzones of mountain rivers in central Japan

説明

I はじめに<br><br> 急速な地殻変動と多量の降水により,日本の山地は第四紀をとおして活発な河川侵食を受けている.そうした山地河川の基盤岩上には,多数の遷急点や遷急区間(knickzone)がみられ(e.g., Hayakawa, 2004),河川の侵食プロセスにおいて重要な役割をもつ可能性がある.しかし,遷急区間の広域的な分布に関する研究は少ない.本研究では,DEM(数値標高モデル)を用いた河川勾配の定量的解析に基づき遷急区間を抽出し,その分布特性を検討する.<br><br>II 山地河川における河床勾配の解析<br><br> 本研究では,解像度50 m のDEMを用いて,関東・中部地域における85の主要な山地河川を対象に解析を行った.まずDEM から発生させた流路上に80 m 間隔で連続する計測地点を設定し,各計測地点を中心とするd m の区間の勾配を計算した.この計測区間d を100 – 10,000 m の間で変化させたときの区間勾配を河川ごとに分析すると,(1)d が100 m では勾配がDEM のデータが離散的に採取されていること等に起因するエラーを反映する,(2)d が200 – 1,800 m では勾配が局所的な地形に依存した変化を示す,(3)d が3,000 – 6,000 m では比較的長い流路全体の傾向的な勾配が得られる,(4)d が6,000 m 以上では勾配が河川全体のconcavity の影響を受けることが示された(Hayakawa and Oguchi, 2004).<br><br>III 遷急区間の抽出と分布特性<br><br> 計測区間d が 200 – 1,800 m の範囲におけるd の増加にともなう区間勾配の減少率は,傾向的な勾配に対する局所勾配の相対的な大きさと対応する.そこで,勾配の減少率がある閾値以上となる区間を抽出し,それを遷急区間と判定した(図1).<br> 得られた遷急区間は,高さ,長さ,勾配の平均値がそれぞれ40 m,230 m,9.4° であり,全河床の4.1% を占め,0.18 km-1 の頻度で出現した.また,山地流域の出口から距離5-10 km の位置,すなわち山地河川の下流部に最多頻度で分布することが示された.一方,遷急区間の分布に対する地質の影響は小さかった.したがって,遷急区間の分布は局所的な岩質の相違ではなく,盆地に対する山地の隆起といった,山地流域全体の発達過程に強く規定されると考えられる.こうした遷急区間の分布特性について,より多くの河川で解析を行い,また活断層や段丘面の分布等との関連を詳細に検討する必要がある.<br>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205691795072
  • NII論文ID
    130007013997
  • DOI
    10.14866/ajg.2005s.0.270.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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