空中写真判読によるフィリピン断層帯の詳細デジタル活断層図の作成

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Compilation of 1:50000-scale digital active fault map of the Philippine fault zone based on aerial photograph interpretation

抄録

<BR>1.はじめに<BR>  フィリピン断層帯は,海洋プレートの斜め沈み込みに起因する長さ1200km以上の島弧中央横ずれ断層である.断層帯の全域にわたって明瞭な変位地形を伴い,20mm/yrを超える横ずれ変位速度が得られている.この断層帯に沿っては,前世紀にM7以上の地震が10程度発生しており,1990年のルソン地震(Mw7.7)では3000名を超える犠牲者が出た.<BR>  しかしながら,既存の活断層図(PHIVOLCS,2000)は衛星画像の判読により作成されており,縮尺も1/50万である.そこで本研究では,フィリピン断層帯全域の空中写真判読により,縮尺1/5万の詳細活断層分布図を作成した.また,今後の調査・研究の基礎資料として広く活用されることを意図して,データを地理情報システム上でコンパイルした.<BR> <BR> 2.空中写真判読およびデジタル化作業<BR>  判読に使用した空中写真の縮尺は,約1/2.5万である.ルソン島南部やレイテ島北部など一部の地域の空中写真を判読できなかったが,断層帯が陸域を通過する区間の約8割については,今回の判読でカバーできた.<BR>  活断層の判読基準は,中田・今泉編(2002)「活断層詳細デジタルマップ」や国土地理院都市圏活断層図の判読基準に準拠した.基図として,フィリピン国家地図資源情報局発行の縮尺1/5万の地形図を使用し,その上に断層線や変位地形(断層崖・河谷の横ずれ・風隙地形など)の情報を書き込んだ.<BR>  作成した活断層判読図を,今後の利活用を考慮して,Windows PC上で稼働するGISソフトウェアであるMapInfo Professionalを使ってデジタル化した.基図は,判読図と同じ縮尺1/5万地形図をスキャンしたものを使用した.この基図の等高線間隔は20mであり,断層トレースの位置についてはかなりの精度で読図が可能である.これらのデータは,MapInfo社のホームページから無料でダウンロードできるMapInfo ProViewerというソフトウェアで表示が可能である.また,ArcGISで利用可能なシェイプファイルや汎用的な作図プログラムであるGeneric Mapping Tool(GMT)などでも利用可能なファイル形式のものも作成した.図1は,GMTを使って,これらの活断層データをフィリピン全土の地形陰影図に重ねたものである.このように陰影図上に活断層データを重ねることで,断層線と地形との対応が容易に把握可能となった.<BR> <BR> 3.作成した活断層図の意義<BR>  本研究によって,フィリピン断層帯の断層トレースの詳細な位置がはじめて明らかとなった.既存の活断層図の縮尺が1/50万であったのに対して,本研究で作成した活断層図は縮尺1/5万であり,断層トレースの位置の精度が格段に向上した.今回の判読によって,既存の活断層図で活断層とされていたものの中には,古い地質構造に沿った差別削剥地形であるものが含まれていたことが明らかとなった.また逆に,今回活断層であると認定されたものの中には,明瞭な線状構造をなさないものも多い.<BR>  歴史地震に対応する可能性のある非常に新鮮な変位地形も多くの地点で見いだされた.例えば,ミンダナオ島北部には,沖積面上に比高数mの低断層崖と河谷の系統的な数mオーダーの左屈曲が残されている.この地域を襲った最近の大地震は1879年に発生しており,これらの変位地形はその地震に伴う地表変位である可能性が高い.  本研究で作成した活断層図は,断層トレースと変位地形を地形図上に示しただけの最も基本的なものである.今後,断層パラメータに関する資料を順次追加していく予定である.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205691802880
  • NII論文ID
    130007014013
  • DOI
    10.14866/ajg.2007f.0.85.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ